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日本のモノレール 熱海モノレール
石狩都市モノレール
北の大地に芽吹いた懸垂式モノレール構想、それが石狩都市モノレール

-石狩都市モノレール-

社名  石狩都市モノレール(仮称)
開業年月日  -
構想時営業距離  -km
駅数  -駅
複・単線  複線
モノレール方式  SAFEGE式懸垂型モノレール
車両 -
北の大地に芽吹いた懸垂式モノレール構想、それが石狩モノレール
未成線とされるこのモノレールは、現在も凍結状態にある。
開業が果たされていれば、日本国内では4番目のSAFEGE(サフェージ)式懸垂型モノレール路線となった。

1.石狩湾新港開発

1970年(S45)7月閣議決定において「第3期北海道総合開発計画」が策定されました。
この中で、現在の石狩湾新港地域開発が重要施策として位置付けられ、この事が石狩モノレール構想の始まりであったと言えます。
1972年(S47)8月、北海道開発庁は「石狩湾新港地域開発基本計画」を策定、札幌・小樽圏における生産、物流の拡大に対応するため、新たな生産・流通拠点の形成を図ることを目的としました。
 石狩湾新港地域は、札幌市中心部からおよそ15kmの近距離に位置し、約3000haの用地を有しています。
現在、開発にあたっては、(株)日本政策投資銀行、北海道、石狩市および民間企業が出資する石狩開発(株)が主体となって行っています。

同計画中においては、札幌の中心部との連携及び通勤の円滑化のため高速軌道についても触れられていました。
石狩市は、主だった交通機関として路線バスがありました。
しかし、冬季、特に積雪時には定時定速性が確保出来ない等、道路交通環境の悪化による渋滞や遅延が大きな問題となっていました。
また渋滞および遅延の生成は、都市機能の低下という問題に直結します。
それまでも市ではさまざまな輸送機関、特に軌道系交通機関の構想が挙がりましたが、予算等の問題から実現には至っていません。

2.石狩モノレール構想

当初は地下鉄建設による検討が行われていたものの、1985年(S60)に日本モノレール協会から石狩モノレールについての事業可能性について提案がなされました。
日本モノレール協会からは、札幌〜石狩間における3ルートが示され、それぞれの建設費や収支などを試算した上で、懸垂型モノレールによる事業の可能性が提案されました。
この頃から、大量輸送機関である地下鉄から中量輸送機関であるモノレールへと検討対象が移り、懸垂型モノレールによる新港〜麻生間約10km、建設費約700億という「モノレール構想」が発表されました。
石狩町議会は、同年12月に「都市モノレールの導入に関する決議」を可決します。
翌1989年(平成元年)にはモノレール推進検討のための組織、「石狩町都市モノレール等推進協議会」(現在の石狩市軌道系交通機関推進協議会)が発足、1994年(H6年)には「札幌圏北部地域交通体系連絡協議会」が発足し本格的な検討段階に入ったと言えました。

1985年 日本モノレール協会より石狩モノレールについての提案
1985年12月 「都市モノレールの導入に関する決議」/石狩町議会
1989年(H元)「石狩町都市モノレール等推進協議会」発足
1994年(H6)「札幌圏北部地域交通体系連絡協議会」発足
1996年(H8) 市制施行 石狩町→石狩市

2-1.石狩モノレールと千葉都市モノレール

石狩モノレール構想および検討が始まった1985年(S60)年よりさかのぼること8年前(1977年(S52))、千葉県および千葉市では懸垂型モノレールによる新交通システムの導入が決定しました。
千葉都市圏においては、モータリゼーションの影響で深刻な交通渋滞に悩まされており、既に路線バスが定時定速性を失っている状況にありました。
事前に策定されていたマスタープランのうち、第一期区間としてスポーツセンター〜みつわ台が着手される事となり、1982年(S57)に起工式を迎えます。

 石狩モノレールが採用する予定であった懸垂式モノレール
千葉都市モノレール1000形
動物園駅付近
 石狩モノレールの項 SAFEGE式モノレールである千葉都市モノレール
千葉都市モノレール1000形
千葉駅付近

千葉都市モノレールで採用されたモノレール方式はSAFEGE式と呼ばれる懸垂型モノレール方式でした。
この方式は、国内では既に東山公園と湘南モノレールで採用されていましたが、千葉都市モノレールへの導入にあたり、更なる改良およびそれに伴う開発を進める事になりました。

マニュファクチャラーである三菱重工において、以下項目の開発が実施されました。
@環境対策における車外騒音の低減(軌道側方70Db以下)
(高砂・長崎・広島の各研究所協力による低騒音プロジェクトチーム発足)
A軌道桁の軽量化
(新軌道桁の開発 S57〜)
B建築限界幅の縮小(狂あい道路への適応)
C分岐駆動方式の変更(油圧から電気式へ)
上記外の開発項目として、特に全天候性(雪対策等)についての開発試験も実施されました。
そして、その全天候性試験が実施されたその場所こそ、本項の主題である石狩町(市)だったのです。
もともと懸垂式モノレールでは走行路面が軌道桁によって覆われている構造を有しており、積雪には有利である事が知られています。
しかしながら、積雪地帯においては、吹雪および凍結等極めて厳しい環境にさらされる事になります。
過去S37〜39年に札幌市郊外および新潟県下において冬季の対候試験を実施し、軌道桁内への着雪現象がない事が既に確認されていました。
千葉都市モノレールへの導入にあたり、SAFEGE式懸垂型モノレールの総合的な対雪対寒性能を検証するため、実寸サイズでの物軌道桁を用いた冬季耐久試験が実施されました。

試験は、@実物軌道による実証実験(1984年(S59)12月〜1985年(S60)年月)A1/40モデルによる着雪風洞試験(北海道興行大学)、について実施され、以下の様な検証結果が示されました。
・猛吹雪の時も含め、軌道桁内への雪の吹き込みは皆無に近く凍結もなく車両走行に全く支障がない。
・軌道桁形状は、桁外面への着雪およびつららの発生状況から、リブ(補剛リング)を桁内面に設ける内リブ式が有効である。
・標準の軌道桁高さ(10m)で地吹雪の影響は全く受けない。

検証結果より、SAFEGE式懸垂型モノレールが積雪地帯でも有用な軌道系交通システムである事が実証されました。
上記の様に、SAFEGE式懸垂型モノレールとして建設された千葉都市モノレール開業の数年前には、石狩町でモノレールが積雪に対して有用である事が既に示されていました。
すなわち石狩モノレールと千葉都市モノレールは、ある種の繋がりによって切っても切れない関係にあると言えます。

2-2.SAFEGE式懸垂型モノレール

SAFEGE式懸垂型モノレールとは、上述した石狩モノレールで採用される予定とされていたモノレール方式です。
国内では三菱重工およびその関連企業によって開発が行われました。
既述した様に、国内では東山公園モノレール(S39年2月開業(500m)-廃線)、湘南モノレール(S45年3月開業(6.6km))および千葉都市モノレール(S63年3月28日開業)で採用されています。
東山公園モノレールは、SAFEGE式懸垂型モノレール国内導入における実験線的位置付けとして建設されており、実質の都市交通機関として建設された湘南モノレールおよび千葉都市モノレールについては、今日に至るまで該当地域の大切な交通手段としてその立ち居地を確立しています。

 SAFEGE式モノレールである千葉都市モノレール
SAFEGE式懸垂型を採用した千葉都市モノレール
(千葉駅を行く0形)
 上野モノレール
現存する懸垂型モノレールとしては日本最古の上野懸垂線
軌道桁および構造は、
SAFEGE式懸垂型モノレールとは異なる。


・軌道桁

SAFEGE式懸垂型モノレールは、その構造上基本的に鋼製による軌道桁となっています。
外観上では判断が難しいですが、基本骨格として外リブタイプ、内リブタイプおよび分岐装置に大別されます。
分岐装置は全体の割合からすると一部分の区間となるため、以下には外リブタイプおよび内リブタイプ2パターンの標準軌道桁について記載します。

標準軌道桁は、側壁部、天井部および下部に配したスキンプレートと、補剛フレーム(以下、リブと略記)ならびに案内走行部プレートにより構成されています。
構造としては、軌道は左右の側壁部、天井部および下部桁を溶接により一体化され、下方に開口部を有した箱型断面形状を有しています。
SAFEGE式モノレールの軌道桁はリブをスキンプレートの外側に配置するか内側に配置するかによって、外リブ型と内リブ型に分類する事ができます。

 石狩モノレール SAFEGE式モノレール軌道桁の取り回し
SAFEGE式モノレールの軌道桁
 石狩モノレール SAFEGE式モノレール軌道桁外観写真
SAFEGE式モノレールの軌道桁

・外リブタイプ
前記天井部と前記側壁部と前記下部桁の内周側または外周側は、周方向に沿うリブが配されています。
このリブは該箱桁の長手方向に所定の間隔で設けられ、モノレールを支える軌道桁を補強しています。
等間隔に続くリブは軌道外観から目視で確認できるため、サフェージ式モノレール軌道の特徴的イメージの一つにもなっています。

 モノレールの軌道桁 外リブタイプ
SAFEGE式モノレールの軌道桁
(外リブタイプ)
千葉都市モノレール建設に際して、
新たに開発された軌道桁。
外周リブは1.5m間隔で並ぶ。
 モノレールの軌道桁 外リブタイプ 水平スチナフ有り
SAFEGE式モノレールの軌道桁
(外リブタイプ)
長尺方向に走る水平スチナフが確認出来る。

・内リブタイプ
内リブ型の鋼軌道については、溶接設計、施工上および構造詳細設計上、外リブ型に比べ問題点が多いとされている事から、国内で営業している路線(湘南モノレール(一部)および千葉都市モノレール)では、ほとんどの箇所で外リブ型の鋼軌道が採用されています。
また、内リブタイプの鋼軌道においては、軌道桁内において等間隔にリブが内周に沿って直立した形状を取ります。
このため、案内部および走行部プレートはこれらをかわす形で配されています。
三菱重工による全天候試験(対雪対寒性能:石狩町にて実施(1984年(S59)12月〜1985年(S60)年月))の試験結果より、積雪地帯における軌道桁形状は、桁外面への着雪およびつららの発生状況から内リブタイプが有用であるとされています。
外リブタイプに対して内リブタイプのモノレール軌道桁では、軌道桁外周上において突起物が少なく、上記した着雪およびつららの発生が抑制される事によると考えられます。
今後の国内における軌道系交通機関建設の動向によって、積雪地帯へのSAFEGE式懸垂型モノレールが導入される事になれば、改めて対雪性能試験が実施される可能性も考えられます。

2-3.2000年代の動き

2001年(H13年)、札幌市総合交通対策調査審議会は、
・北部方面の延伸は栄町よりも麻生起点のほうが需要確保などで優位
・まちづくりの進展や人口の見通しなどを見極めた慎重な検討
・事業成立性を高めるため、新たな事業手法や運営の効率化についての検討が必要
との答申を示した。
合わせて同審議会では、北部地域はモノレールの採算性が高く、特に路線を札幌市内のみとした場合は、開業初年度から採算を確保できるとの見解もされました。

2003年(H15年)、最新の人口予測に基づく需要予測を行った結果、一転して将来需要は従前の予測を大きく下回り、採算確保は困難であるとの調査結果が示されました。
事業化のためには需要の喚起や事業費の削減、あるいは鉄道以外の新交通システムの導入検討も必要とされました。
また、翌2004年(H16年)には鉄道新線建設による波及効果などの検討を行ったところ、建設時を除いて経済波及効果は少なく、「非効率な事業」と言わざるを得ないとの報告がなされました。
この報告を契機として石狩モノレールについては、これまで永年にわたって検討課題とされてきたにも関わらず、最終的に結論が出ないまま現在に至る事となり、事実上の凍結状態となりました。
ただし、市内のシンポジウムベースでは未だ議論の対象となっており、今後の進展が期待されるところでもあります。

 


 
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