成田観光開発株式会社のモノレール計画とは、新成田および新勝寺間の2.4kmを繋ぐ予定であった、日本ロッキード式のモノレール路線です。
|
新勝寺 |
成田空港からほど近い、成田駅周辺に、このモノレール路線は計画されました。もっとも、成田空港の建設が閣議決定したのは1966年であり、当時現地に空港は無い状態でした。
成田観光開発株式会社とは、東京都に本社を置く資本金1000万円の会社で、モノレール事業、観光開発事業 及び不動産の売買等を目的として 昭和38年10月に設立された会社で、免許取得(1964年
昭和39年 12月11日付け)後 残念ながら解散してしまいました。 |
成田空港外観 (c)Adobe |
この路線が着手されていたら、小田急モノレール線、姫路市営モノレールにならび、日本国内では3つ目のロッキード式モノレール路線となっていたかもしれません。
なお、小田急モノレール線 姫路モノレール共に、開業が1966年ですから、この2年前に 成田山モノレールの免許が取得されていたという事になります。 |
成田山モノレールへ導入されていたであろうロッキード式モノレール(画像は姫路) |
実はこのルート、ほぼ同区間において、アルウェーグ式モノレールでの敷設を前提として申請も出されていました。こちらは、成田山モノレール観光株式会社によって、成田から成田山門前間の1kmで計画されていました。上述した成田観光開発株式会社のモノレール路線の免許が通った事で、こちらのアルウェーグ式モノレールの計画は却下となっています。 |
アルウェーグ式モノレールとロッキード式モノレールでは、動力伝達車輪が根本的に異なる。画像はロッキード式モノレールの鉄車輪 |
終点となるはずだった成田山新勝寺は不動尊の総本山として信仰の中心であり、参詣者は年々増加、当時年間650万人に及んでいました。
参詣客の大部分が往復する成田駅および新勝寺間は、自動車と歩行者とが交錯し、当時のモータリゼーションのよって自動車が大型化。国道51号線、船橋から成田間の有料道路、国鉄の千葉および成田間の複線化等により、数年後には一千万人の参詣者が推定されている状況となっていました。
この状況に対応すべく、並行路線に重複しない経路で跨座式モノレールを敷設し、参詣客のほか、一般観光客を、快適、安全かつ能率的に輸送し、交通緩和に寄与する目的で免許されたものでした。 |
成田山新勝寺前の道路 |
もともとこのルートには過去には鉄道が走っていました。
古くから参詣客の多かった新勝寺と 宗吾霊堂を東西に結んだことから、「成宗電気軌道(せいそうでんききどう)」という名称となっていました。
現在跡地は電車道として自動車用の道路が敷かれています。現役当時のトンネルも2か所残されたままとなっていて、かつての鉄道線に思いをはせることができます。 |
成宗電気軌道は現在トンネルが残されている。 |
成宗電気軌道で使用していた第一トンネル |
成宗電気軌道で使用していた第二トンネル |
成田観光開発株式会社のモノレールについては、成田山モノレール観光株式会社のモノレールと混同する事を避けるため、以降 成田山ロッキードモノレールと呼称します。
さて、成田山ロッキードモノレールの起点は、現在の京成線 成田駅から。路線は全線単線のロッキード式モノレールでの建設が計画され、建設費は概算で8億1448万円となっていました。現在と当時の物価の違いに驚きます。
免許時には、申請の規模、工事内容、輸送計画、建設費 及び収支の見積りはほぼ妥当とされ、比較的実現可能な計画であったようです。 |
成田山ロッキードモノレールのルートと想定される区間 |
当時は未だ、都市モノレール法もない時代。同路線も地方鉄道として申請されていた事から、ルートはおおよその線形をプロットしています。終点位置については、申請記述にあるように、新勝寺周辺に配置されていたものと考えらます
京成成田駅から新勝寺までは起伏が激しく、新勝寺正門付近までのルートはほぼ選択の余地がありません。
申請された路線長 2.4kmをベースとすると、新勝寺の正門付近は駅配置こそすれど通過、さらに奥手に位置する駐車場付近に、新勝寺駅及び簡易的な検収場が配置されたのではないかと考えられます。 |
成田山ロッキードモノレールの終点位置と想定される位置 |
当時、輸送需要が日に日に大きくなっていた新勝寺までの交通手段、このモノレールはこれに対応する交通機関として免許が申請され、建設に着手できる前段まできていました。
結果的に、申請した成田観光開発は解散。この計画も白紙となってしまいました。民鉄要覧には1968年まで記載、つまり計画として残っていたそうですが、採用された同ロッキードモノレールシステムについてもその後、姫路モノレールが廃止、開業にこぎつけるには多くの課題が待ち受けていた事でしょう。
|