上尾市都市モノレールは、昭和61年に報告書が取りまとめられた都市モノレール構想ルート。埼玉県と地元では、かつて 東北 上越新幹線建設の条件として通勤新線
のちの埼京線の設置を要望。1985年9月に赤羽から大宮間が開業します。さらに、埼玉新都市交通 ニューシャトル が1983年12月に 大宮から羽貫間で運行を開始、1990年
8月に 大宮から内宿までの全線開業に至りました。
|
実はこれ以外にも、都市圏内の公共交通を充実させる目的で、都市モノレール および 新交通システムの導入構想が議論されており、周辺地域となる当時の大宮市では
大宮都市モノレールが、当時の浦和市でも浦和市都市モノレール構想の議論が行われています。
大宮や浦和の都市モノレールと市境界で接続し、上尾市中心部、原市、丸山、伊奈中央までの接続ルートとして構想されたのが、上尾市都市モノレールでした。 |

埼玉中枢都市圏都市モノレール路線構想
(c)Google earth |
2.上尾市都市モノレール構想ルート
上尾市都市モノレールの構想ルートは少しややこしく、1案と2案の2パターンのルートが構想されています。
白色で示す部分が 1案2案共に共通する区間。黄色が1案、青色が2案のルートを示しています。なお、1案については、上尾駅付近までは複線、上尾駅以降、単線で分岐し、それぞれ原市駅と伊奈中央駅を目指すルートとなっていました。
|

上尾市都市モノレールの構想路線図 (c)Google earth |
まず、大宮都市モノレールとの接続駅、かつ上尾市都市モノレールの南側起点駅となるのが、高木駅(右図中 1と表記している位置)。ここで大宮都市モノレールと相互乗り入れを行い、上尾駅まで接続する構想でした。
ここから上尾駅付近までは、原市 伊奈中央ルート および 丸山ルート共に 路線が共通していますので、図中には白色でルートを示しています。
|

上尾市都市モノレールの構想路線図 1案2案共有部
上尾市 上尾市都市モノレール調査報告 より (c)上尾市
|
大宮都市モノレールから 上尾市域にバトンタッチした上尾市都市モノレールは、上尾バイパスを伝い北上、西上尾第二団地 先で 東西幹線道路に入り、さらに 西上尾第一団地前を通過します。 |

上尾市都市モノレールの構想路線図 1案2案共有部
上尾市 上尾市都市モノレール調査報告 より (c)上尾市 |
ここから先、構想上の都市計画道路を伝い、上尾駅付近へ到達するのですが、ここからが 上尾市都市モノレールの線形を複雑にしているポイントになります。
上尾市都市モノレールでは、上尾駅付近で単線となり、それぞれ 伊奈中央 原市を目指す ルート1案、そして、複線のまま上尾駅を通過、丸山駅を目指す
ルート2案が構想されていました。
図中、9駅の位置でルート分岐していると思いますが、ここで1案と2案のルートが別れます。 |

上尾市都市モノレールの構想路線図 6駅から9駅付近
上尾市 上尾市都市モノレール調査報告 より (c)上尾市 |
1案の内、伊奈中央を目指すルートに沿って進んでいきます。このルート、上尾駅の北側に位置する市民体育館通りではなく、構想上の 仮称 東西幹線道路を帰属するルートとなっています。
よって、現在 6〜12駅のルート・位置に 幹線街路は存在していません。また、伊奈中央駅直前まで主だった道路がありません。
図右上には、埼玉新都市交通 伊奈線の 伊奈中央駅が位置しています。上尾市都市モノレールの1案 伊奈中央ルートは、伊奈線の 伊奈中央駅前の道路に直角に侵入してくる線形で、末端駅を配置する構想でした。
もう一つの1案ルート、原市ルートが図中、上尾駅から原市駅まで横方向に伸びるルート。
後に紹介する2案とは異なり、上尾駅の直前を通過しないのが特徴です。 |

上尾市都市モノレールの構想路線図 1案全体
上尾市 上尾市都市モノレール調査報告 より (c)上尾市 |
1案の分岐ルートは、いずれも単線で 各末端駅を目指すルートとなっていて、上下線の交換は 各駅で行う予定でした。
モノレールの敷設では、分岐器にコストが掛かる事は 当時でも周知の事実となっていました。
実際、各駅に分岐器を配置し、交換駅として機能させるつもりだったのかは、いささか疑問が残るところではあります。
|

上尾市都市モノレールの路線配置図
上尾市 上尾市都市モノレール調査報告 より (c)上尾市 |
画像中央18駅位置で、2案の想定ルートと分離、埼玉新都市交通 伊奈線の原市駅(19駅)に接続しました。
伊奈線 原市駅に寄り添う形で、道路直上に駅舎を配置するイメージでした。 |

上尾市都市モノレールの構想路線図
1案原市ルートおよび2案丸山末端部
上尾市 上尾市都市モノレール調査報告 より (c)上尾市 |
ルートの2案、上尾駅から丸山駅に至るルートにについては、現在上尾中央病院が建っている位置で右折、上尾駅駅前を通過するルートでした。上尾駅前広場に
高崎線と並行する形で進入する線形となっています。
画像を左手に進むと 1案との分離部 上尾中央病院付近、右手に進むと 丸山駅方向となります。
|

上尾駅付近の2案の線形 上尾市 上尾市都市モノレール調査報告 より (c)上尾市
|
上尾駅を出た2案 モノレールルートは、51号 および323号に帰属、ここから丸山駅まで、道路の線形上一直線で末端部を目指しました。画像右上に位置するのが丸山駅です。 |

2案丸山駅末端部
上尾市 上尾市都市モノレール調査報告 より (c)上尾市 |
3.埼玉中枢都市圏都市モノレール構想
当時は都市モノレールの導入が、一つのトレンドとなっていた時代。上尾市も同様に 今回のモノレールルートを調査検討していたのですが、多摩や千葉等と異なり、上尾市は実際の所
完全に単独構想として調査を進めていたわけではありません。 |
 |
埼玉中枢都市圏では、上尾市を含む複数の都市で 都市モノレールの構想を立ち上げ、具体的には、大宮、浦和、川口、そして今回の上尾市等、地域を跨いだモノレール路線網を構想しました。このため 上尾市都市モノレールは、市南側で構想された 大宮都市モノレール構想ルートと接続する形で、上尾市内へのモノレール路線の展開をベースとする計画として調査されました。
このため、上尾市の南側の路線はほぼ一択となり、市の北側については、市の発展を第一に考え、複数のルートが検討されたようです。 |
 |
ここから先は、上尾市都市モノレールに限定した課題ですが、上尾市都市モノレールの北側 または東側末端部は、いずれも埼玉新都市交通 ニューシャトルの各駅に接続する事を前提とした調査が行われていました。当時伊奈町では
都市モノレール等の構想について 町として関与しないことを示していたほか、東北・上越新幹線によって 町が分断されるのと引き替えに この埼玉新都市交通
ニューシャトルを開業することを確約、町と大宮とのアクセスが改善されたばかりでした。町として、この都市モノレールへの費用負担に難色を示した状況です。
また、都市モノレールを構想をもっていたいずれの都市も モノレール導入には 拡幅を前提とする16mの幅員しかない道路が多く、構想以前に ルート上の道路を拡幅する必要があったのです。今現在も
特に多摩モノレール延伸を計画する市域では 道路幅員の不足がネックとなり、計画の実行に移れない という状況がありますが、この埼玉中枢都市圏の多くの都市で
同じ課題があったようです。
結果的に、上尾市都市モノレールを含む、埼玉中枢都市圏の都市モノレール 大宮都市モノレール、浦和都市モノレール、川口都市モノレール いずれも開業する事はありませんでした。
|