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モノレール国内編
湘南モノレール(c)撮影モノレール・ジャパン田村拓丸
湘南モノレール
-Syounan Monorail-
Suspended monorail (SAFEGE) system , Mitsubishi


1.湘南モノレール
湘南モノレールは、神奈川県の鎌倉市大船と湘南江の島を結ぶ懸垂式モノレール路線です。
路線はJR大船駅付近から湘南江ノ島までの6.6kmを結びます。
現存するモノレールでは珍しく全線単線となっているため、途中に交換駅が設置されています(富士見町駅、湘南深沢駅、西鎌倉駅および目白山下駅)。
2015年より、経営共創基盤傘下のみちのりホールディングスが株式の92%を保有する事となりました。
 湘南モノレール5000形ピンクリボン号
湘南モノレール5000形 ピンクリボン号
 湘南モノレール5000形ピンクリボン号 大船駅にて
大船駅付近を行く湘南モノレール5000形
 湘南モノレール5000形 オレンジライン
湘南モノレール5000形 イエローライン
 湘南モノレール5000形ブルーライン編成
湘南モノレール5000形 ブルーライン
 湘南江ノ島駅を発車する湘南モノレール500形
湘南江ノ島駅を発車する湘南モノレール500形
(551F編成)
 6月に引退した湘南モノレール500形
湘南モノレール500形

湘南モノレールはSAFEGE式モノレール国内導入のため、三菱重工業を始めとする三菱グループおよび京浜急行電鉄等が1966年に設立しました。
導入にあたっては日本エアウェイ開発を設立し、同社がフランスのサフェージュトランスポール社とSAFEGE式モノレールの技術契約を結びました。
開発期は、新幹線の開発に携わった事でで知られる三木忠直を迎え技術開発を行いました。

開業後は、湘南地域観光地アクセス鉄道としての色合いが強かった湘南モノレールですが、現在では通勤路線としての立ち位置を確立しています。
これら乗客増に伴って、1975年には3両編成車両を投入しました。世界で唯一のSAFEGE式モノレール中間車両を登場させた事になります。

2.サフェージュ(SAFEGE)式モノレール

2-1.サフェージ(SAFEGE)式モノレール


湘南モノレールを説明する上で"サフェージ(SAFEGE)式"という単語は欠かせません。
サフェージュ(SAFEGE)式とは、フランスのLucien Chadenson(ルイ・シャーデンソン)ら設計チームが1957年頃に開発した懸垂型方式のモノレールシステムです。
フランス国内の企業25社による連合の頭字語 (Societe Anonyme Francaise d' Etude de Gestion et d' Entreprises)からSAFEGE式と呼ばれました。
主要企業にはタイヤメーカー(ミシュラン)、自動車メーカー(ルノー)等が名を連ねていました。

当時パリでは、ゴムタイヤ台車方式による走行システムをベースとした地下鉄を開発していました。
SAFEGE式モノレールはこの構造を参考にして、台車下に車体を吊下げる懸垂式モノレールとして開発されました。
後に改良が重ねられ、軌道となる桁は軌道桁上面を覆う中空の箱型に変更、走行面は準密閉式となります。
軌道桁が密閉空間になった事によって、雨雪の影響を受けない地下鉄と、高架化が容易なモノレールの利点を掛け合わせた新交通システムとなりました。
さらに台車は、高速走行時でも安定と快適さを兼ね備えた空気ばね式の振子型サスペンションを装備しました。
 東山公園モノレール外観  東山公園モノレール軌道桁

2-2.オルレアン実験線とFahrenheit 451

フランス国鉄およびパリ交通公団は共同で、フランスのオルレアンの近くのシャトーヌフーシュルーロワールに、サフェージュ(SAFEGE)式モノレールの試験線を建設しました。
このオルレアン実験線にはSAFEGE式モノレールでは第1号となる分岐器や、車両検査施設も設けられました。
(工期は1959年4月~1960年4月、~1967年まで運用)

その後、1967年までフルサイズ車両を用いた試験が続けられます。
(概観形状は後に登場する東山動物公園のSAFEGE式モノレールと酷似しています。)
その後オルレアンの試験線は、1970年~1971年の間に段階的に解体され、現在は存在しません。

このオルレアン実験線が登場する映画にFahrenheit 451「華氏451」があります。
Fahrenheit 451「華氏451」とは、フランソワ・トリュフォー監督による1966年のイギリス映画です。
原作はレイ・ブラッドベリ著「華氏451度」で、タイトルの華氏451度とは紙の燃焼が始まる華氏451℃(=摂氏233℃)を意味します。
この「華氏451」の映画の中で、主人公が通勤に使う交通手段としてオレルアン実験線のモノレールが登場します。
モノレール以外の撮影はイギリス内で、モノレールを使用したシーンはフランス国内で撮影しています。

2-3.日本エアウェイ

SAFEGE式モノレールは、その後フランス国内で発展していくことはありませんでしたが、海を渡った日本では、三菱重工業によって受け継がれていくことになります。
三菱重工業はSAFEGE式モノレール技術の国内導入にあたって、日本エアウェイ開発を設立させます。
その後同社は、名古屋の東山公園へ短距離路線を開業させ、同時にSAFEGE式モノレールの試験とデータ収集を行いました。
東山公園では、植物園と動物園の間を結ぶ本格的な観客輸送用の路線建設が議論されいたため、上記路線を計画していた三菱重工業は名古屋市へサフェージュ式モノレールの導入を提案しました。
三菱重工は実験線の開業によってサフェージュ式の試験データを収集をする代わりとして、システムの保守管理を低廉で行いました。

1964年(S39)2月、三菱が建設費用約2億円を持ち、名古屋市交通局(名古屋市交通局協力会)による運営によって東山公園のモノレールは開業を果たしました。
車両は1両編成とし、アルミ合金の車体に赤い帯を配した塗装は、その後ウルトラマンにもなぞらえられました。
 東山公園のサフェージ式モノレール  湘南モノレールの元祖、東山公園モノレール
写真 国内におけるSAFEGE式モノレールの元祖、東山公園モノレール。今もなお園内に静置されている。

東山公園で培った実用データを基に、その後の湘南モノレールおよび千葉都市モノレールの開業へ繋がっていきます。
なお、東山公園のSAFEGE式モノレールは、1974年12月に廃止されています。
現在でもモノレール車両は、旧植物園駅(売店直上)に移動され当時の鋼軌道桁とともに静置されています。

〔SAFEGE式モノレールの運用年表〕
 1959年-1960年 オルレアン実験線(フランス)
 1964年-1974年 名古屋市交通局協力会(東山公園モノレール)
 1970年-     湘南モノレール
 1988年-     千葉都市モノレール

湘南モノレールの建設にあたっては、三菱重工業を始めとして三菱重工業三原製作所および三菱電機が携わっています。
国内ではSAFEGE式モノレール=三菱と言われる様に、三菱グループが総合を挙げて建設が行われました。

1970年3月 大船~西鎌倉間開業
1971年7月 西鎌倉~湘南江の島間延伸開業

開業時は300形車両によって運行が開始されましたが、1980年には400形車両、1988年には500形車両、2004年には最新型となる5000形が登場しています。
 湘南モノレール500形外観  湘南モノレール400形外観
湘南モノレール 500形 および400形

4-1.トピックス 三菱重工業による湘南モノレールの全持ち株売却

2015年5月22日、三菱重工業など三菱グループ系3社は、湘南モノレールの全株式を交通支援事業会社、みちのりホールディングス(HD)に売却することで合意したと発表しました。
同社では、国際競争が激化する近年、事業の「選択と集中」によって高い成長が見込めるコア事業への経営資源投入を加速させており、湘南モノレールの持ち株譲渡もその方針へ沿うものとしています。

三菱グループは、上述したSAFEGE式モノレールの技術実証路線として湘南モノレールを立ち上げた経緯があります。
株式譲渡は、三菱グループによる同システムの実証実験およびベース開発の終了を意味するものとなりました。
(三菱重工業は引き続き、車両の供給および保守などを通じ湘南モノレールに協力していくとしています。)

4-2.トピックス 2016年6月26日 500形引退

2016年6月26日をもって、湘南モノレール500形全車両が引退を迎えました。
6月26日(日曜日)にはラストラン(イベント)が行われ、28年間の歴史に幕を下ろす事となりました。
湘南モノレール500形車両は昭和63年より活躍を続ける湘南モノレールの第3世代車両。
第4世代車両である5000形と置き換えが進められており、今回が最後の置き換えとなりました。
 湘南モノレール500形湘南深沢駅付近
湘南モノレール500形車両
 湘南モノレール500形の車内
湘南モノレール500形車両 車内の様子
 湘南モノレール500形記念HM
湘南モノレール500形車両 記念HM
 深沢駅を発車する湘南モノレール500形
湘南モノレール500形車両(湘南深沢駅付近)

路線名 湘南江の島線 
開業年月日  
営業距離  6.6km
駅数  8駅
複・単線  単線
モノレール方式 懸垂式 (サフェージュ式) 
路線概要  
 車両
5000形
 
 
500形
湘南モノレール500形90年代
500形(S63年~)

編成:MC1 M2 MC3
電動制御車+電動車
定員:228人
車両寸法:L12,750mm*W2,650*H3,094 /car
最高速度:75km/h
加速度:4.0km/h/s
減速度:4.0km/h/s(常用最大)、4.0km/h/s(非常)

台車:4軸ボギー台車
車体:全アルミニウム合金製

400形
湘南モノレール400形90年代
400形(S55年~H16年)

編成:MC1 T MC2
電動制御車+付随車
定員:202人
車両寸法:L13,000mm*W2,650*H3,091 /car
最高速度:75km/h
加速度:3.2km/h/s
減速度:4.0km/h/s(常用最大)、4.5km/h/s(非常)

台車:4軸ボギー台車
車体:全アルミニウム合金製
300形
300形(S45年~H4年)

編成:MC1 M3 MC2
電動制御車+電動車
定員:305人
車両寸法:L13,000mm*W2,650*H3,136 /car
最高速度:75km/h
加速度:4.0km/h/s
減速度:4.0km/h/s(常用最大)、4.5km/h/s(非常)

台車:4軸ボギー台車
車体:全アルミニウム合金製


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湘南モノレール画像集

90年代の湘南モノレール500形大船駅
湘南モノレール 500形(大船駅)

湘南モノレール400形
湘南モノレール 400形(深沢車庫)
H16年に引退(非冷房車だった400形は予備役としていた。)

湘南深沢駅付近を行く湘南モノレール500形
深沢車庫より営業線500形を見る

湘南モノレール500形(c)田村拓丸 

大船駅に停車中の湘南モノレール500形(c)田村拓丸 大船駅に停車中の湘南モノレール500形 撮影田村拓丸

     

 

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