
モノレールニュース
-2026年度-
海外
ドミニカ共和国
|
||||||||
工事進捗率92.6%、2026年内に営業開始へ向けた本格試験を予定
ドミニカ共和国北部の主要都市、サンティアゴ・デ・ロス・カバリェロスで建設が進められている「サンティアゴモノレール」が、完成に向けた最終段階に入りつつあります。
ドミニカ共和国大統領府が2026年6月12日に公表した情報によると、事業全体の進捗率は92.6%に達しました。同日にはルイス・アビナデル大統領が車両基地や駅施設などを視察し、土木構造物や鉄道システムの整備状況を確認しています。事業主体は、主要な土木工事を2026年8月までに終え、第4四半期から列車を使用した動的試験を本格化させる計画を示しています。ただし、これは営業開始日が決定したことを意味するものではありません。
2026年12月頃には追加車両の到着と、営業運転に近い条件で列車を走らせる試験が予定されています。
![]() サンティアゴモノレール |
市内を北西から南東へ結ぶ約13km・14駅の路線
サンティアゴモノレールは、市北西部のシエンフエゴス地区から、市南東部のペキン地区までを結ぶ都市交通路線です。市内の人口が集中する住宅地区や商業地区、公共施設、交通結節点を北西から南東へ結びます。Alstomや事業主体のFITRAMが公表している路線概要では、本線の延長は約13km、駅数は14駅です。これとは別に、車両の留置や検査、整備、入出庫などに使用する車両基地内の線路が約3.2km整備されます。公表資料によって路線長の数字に違いが見られるのは、本線だけを示す場合と、車両基地への接続線や関連区間を含める場合があるためと考えられます。
完成時の計画輸送力は、片方向1時間当たり約2万人です。1日当たりの利用者数は約20万人が想定されています。いずれも開業後の実績ではなく、事業計画上の輸送力と需要予測です。
サンティアゴでは、自動車やバス、小型の乗合車両、オートバイなどが市民の移動を支えています。一方、人口の増加や市街地の拡大に伴い、道路混雑や移動時間の増加が都市交通上の課題となっています。
2026年6月時点では、高架橋を支える杭4,246本の施工が完了し、軌道を支えるコンクリート桁1,132本についても製作を終えたと発表されています。支柱に相当する柱は679基、軌道桁を受ける柱頭部は619基、基礎部分は637基まで設置されました。一部の区間では、沿線地域からの要望や周辺環境への配慮によりルートが変更され、構造物の施工に時間を要した場所もあります。
進捗率92.6%という数字は、駅舎や高架橋などの土木構造物だけを示すものではありません。電力供給、信号保安、通信、運行管理など、列車の運行に必要なシステム全体を含めた事業の進み具合を示したものです。
構造物の整備が大きく進んだ現在は、個々の設備を完成させる段階から、車両、信号、電力、駅設備、運行指令を一体の鉄道システムとして機能させる段階へ移りつつあります。
高架構造と地下駅を組み合わせた都市景観への対応
サンティアゴモノレールは、路線の大部分が高架構造で建設されます。一方、市中心部のモニュメンタル地区では、周辺の景観に配慮した地下構造が採用されています。モニュメンタル地区には、サンティアゴを象徴する建造物の一つである復興英雄記念碑や、グラン・テアトロ・デル・シバオなどがあります。
この場所に通常の高架駅を設けた場合、大規模な駅舎や軌道構造物によって記念碑への眺望に影響を与える可能性がありました。そのため、モニュメンタル地区の駅施設については、地下構造を取り入れた設計が進められています。モノレールは、比較的細い支柱と軌道桁によって道路上空に路線を整備できることが特徴です。しかし、サンティアゴでは高架方式を路線全体へ一律に適用するのではなく、歴史的・文化的に重要な地区では構造を変え、都市景観との調和を図っています。
都市中心部では景観を守り、その他の区間では高架構造によって用地への影響を抑えるという考え方です。新たな交通インフラを既成市街地へ導入するうえで、地域の特性に応じて構造形式を使い分けた事例としても注目されます。
Innovia Monorail 300と完全自動運転を採用
サンティアゴモノレールに導入される車両は、Alstomの「Innovia Monorail 300」です。
Innovia Monorail 300は、大都市圏の大量輸送を想定した跨座式モノレール車両で、ブラジルのサンパウロ、エジプトのカイロ、タイのバンコクなどでも採用されています。サンティアゴ向けの車両は4両編成で、1編成当たりの定員は約580人、最高速度は時速80kmとされています。車両の仕様や輸送力は、短距離の観光交通ではなく、都市の幹線交通として使用することを前提としたものです。
2024年には先行する2編成がドミニカ共和国へ到着し、完成した一部区間で初期段階の動的試験が実施されました。この試験では、車両の走行状態やブレーキ性能、電力供給、軌道桁との関係、車両制御などの確認が行われています。
列車の運行には、Alstomの列車制御システム「Cityflo 650」が採用されます。無線通信を利用して列車の位置や速度を連続的に把握するCBTC方式で、運転士を必要としないGoA4の完全自動運転に対応します。GoA4では、通常の走行、駅への停止、ドアの開閉、折り返しなどが自動化されます。路線全体の列車位置や設備状態は運行指令所で監視され、異常時には係員がシステムを通じて運行を制御します。事業計画上の最短運転間隔は90秒です。利用者が集中する時間帯には運転本数を増やし、需要が少ない時間帯には運転間隔を調整するなど、利用状況に応じた運行が想定されています。
ロープウェイと一体化するサンティアゴの公共交通
サンティアゴモノレールは、単独の路線として整備されているわけではありません。路線の中央部に設けられる交通結節施設では、2024年3月に開業したサンティアゴ・ロープウェイ1号線と接続する計画です。
ロープウェイ1号線は、中央ターミナルからラ・ジャグイータ・デル・パストール地区までを結ぶ約4km、4駅の路線です。河川沿いや起伏のある地域をロープウェイが結び、市街地を縦断する比較的長距離の輸送をモノレールが受け持ちます。地形条件に対応しやすいロープウェイと、大量輸送に適したモノレールを組み合わせ、それぞれの特徴を生かした公共交通網を構築しようとしています。中央ターミナルには、モノレールとロープウェイに加え、路線バス、タクシー、自転車など複数の交通手段を集約する計画です。公共サービス施設や商業施設も整備され、単なる乗換駅ではなく、市民の移動や生活を支える複合的な交通拠点として位置づけられています。
運賃や決済についても、モノレール、ロープウェイ、バスなどを共通の仕組みで利用できる統合システムが想定されています。異なる交通機関を円滑に乗り継げるようになれば、公共交通全体の利便性向上につながります。
サンティアゴモノレールの目的は、単に新しい路線を開業させることだけではありません。自動車や小型の乗合交通を中心としてきた都市の移動構造を見直し、モノレール、ロープウェイ、バスなどを組み合わせた公共交通体系へ転換する計画の中心に位置しています。
Alstomは、サンティアゴモノレールをドミニカ共和国初、カリブ海地域初の本格的な都市モノレールと位置づけています。世界のモノレールには、空港内交通、観光施設内の移動手段、比較的短距離の支線として整備された路線もあります。これに対し、サンティアゴモノレールは1日約20万人の利用を想定し、都市を縦断する基幹公共交通として計画されています。なお、ドミニカ共和国では、首都サントドミンゴでも別のモノレール計画が進められています。
主な参考資料:ドミニカ共和国大統領府、サンティアゴ統合交通システム事業主体FITRAM、Alstom公式発表。
![]() |
![]() - mjws.org サイトトップへ戻る - 上部にリンクインデックスが表示されない場合はお手数ですが、 こちら をクリックして下さい。Welcome to mjws!The index page is here. |