Monorails of Japan website > モノレール国内編 >モノレール計画路線(解消・未成線)【昭和40年~60年頃】
※新しいウィンドウが開きます。 Welcome to mjws!The index page is here. |
|||||
計画名称 | 熊本市モノレール健軍線 (便宜上2016年以降の検討路線についても触れる。) |
||
検討開始 年月日 | 1960年、2016年 |
||
1.熊本市モノレール健軍線1-1.熊本市モノレール健軍線の概要、路線計画日本全国で一時計画が進められた、都市部のモノレール計画、1970年代には政府のモノレール推進補助金が追い風となり多くの地域で検討、一部では導入がなされました。しかし熊本県では意外な目的でモノレール導入の検討がなされていました。それは「空港と都市部をつなぐ」交通手段としてのモノレール導入です。ここでは熊本市で検討された、「熊本市モノレール健軍線」の計画概要について解説いたします。 2.熊本市モノレール健軍線計画概要熊本県には熊本市のお隣の町、益城町に熊本空港があります。1960年、旧陸軍熊本飛行場跡地に開港したこの空港は、ある問題を抱えていました。それは空港と熊本市街地を結ぶ、交通網の確保でした。2-1.発端は熊本空港と熊本市街を結ぶ交通網の整備1960年開港時より熊本空港と熊本市街を結ぶ交通手段はリムジンバスによる移動が主となっています。しかしながらこの空港バス、熊本空港までの移動時間は「公称60分」とされているのです。そうです、空港バスは一般道を利用し熊本駅まで移動します。よって朝夕のラッシュ時などは渋滞に巻き込まれ90分以上もかかることもありました。これでは飛行機の乗り遅れや帰宅時に時間が読めないなど利用者にとって非常に不便な状況にあるため、熊本県、および熊本市は代替案の検討にはいることにしたのです。 2-2.鉄道による高速で時間が安定している交通方法での検討開始空港バスの代替案として検討が進められたのが、鉄道による移動手段でした。何より渋滞等による移動時間のばらつきがなく、且つリムジンバスより高速で移動できる手段として検討した結果、電車という選択肢が出てきたのです。詳細は後ほど説明しますが、この検討開始が熊本市モノレール健軍線計画のスタートだったと言っても過言ではありません。 2-1.一旦計画は中止されるも、熊本地震の復興支援が「追い風」になり復活しかしながらこの構想はその後何度も検討されては消えると言ったことを繰り返していた。1960年以降実に半世紀にわたり、当時の国鉄延伸やモノレールの設置など多くの案が検討されるものの、その都度消えるといった具合だったのです。その理由は需要予測にありました。鉄道はバス移動の問題であった、「定時」「速度」「大量輸送」の3つをかなえることはできるものの、空港の利用客数が少なく、投資に見合う需要が見込めなかったからなのです。 ただそんな中、この計画が急速に進むきっかけとなる事件が起こります。それが2016年熊本地震です。 熊本地震は熊本空港がある益城町を震源地とした震度7の地震が2回発生、空港ビルは被災、閉鎖される事態となりました。 当時震災で沈んでしまっていた熊本県下の精神的柱が必要だ、とした当時の蒲島郁夫知事は復興のシンボルとして被災した熊本城とこの熊本空港をシンボルに掲げました。 熊本空港を復興の代名詞とし、コンセッション方式の導入などを行った結果、18年度の利用客は一気に回復、346万人という快挙を達成しました。これにより需要が見込めるとして、熊本空港への鉄道沿線は現実のものとして検討が急がれることになりました。 2-3. 3つの案が検討、比較された熊本空港と熊本市街を結ぶ鉄道はその方式として3つの案が検討されました。2つは既存JR、および市内電鉄の延線、そしてもう1案が、今回の主題であるモノレールによる路線新設だったのです。1960年代の検討開始からこれら案が浮かんでは消えを繰り返していましたが、2016年以降、この3案で検討することが正式に決定しました。検討開始から苦節半世紀、くしくも熊本地震という大アクシデントが計画を後押しする結果となっていきます。 案1:JR豊肥本線の延伸まず1つ目はJR延線による案です。熊本空港から最も近いJR豊肥本線、三里木から熊本県民公園を経て熊本空港に向かう案です。近隣まで既存路線が使えることや、中継する熊本県民公園までの利用客が見込める事、電車ということで定時、高速、大量輸送の3つが満たされることから、当初から最有力であった案です。案2:熊本市電 健軍町電停から空港までの延線2つ目が熊本市電を延線するルートです。もっとも最寄りの健軍線町駅から近隣の自衛隊基地前を経由し、熊本空港まで接続する案です。この案は案1のJR延線同様、途中までの路線を利用できる点ではメリットがある案と言われていましたが、ワンマン市電ではJRほどの大量輸送が見込めないこと、そしてなによりバスより到着時間が遅くなってしまうことが課題と言われている案でした。案3:モノレールによる熊本空港~熊本駅間の路線新設そして3案目は今回の主題である、熊本モノレール健軍線の新設案です。熊本駅から熊本空港まで専用のモノレールを新設し、空港間を高速で結ぶ案です。定時、速度、大量輸送という3つの問題を解決し、さらにどの案より最も高速に移動できることがメリットでしたが、完全親切となるためそのコストがネックになるのではと予測されておりました。3.モノレール計画計画の検討結果モノレール案は当初の定時、速度、大量輸送の3つのポイントに加えコストや利便性など多くの観点で検討が進み、2018年に最終案の確定に至ります。3-1.採用案は案1:JR肥後線による案が採用最終的には当初から有力視していた案1:JR肥後線の延線案が採用されることになります。定時、速度、大量輸送の3つのポイントをすべて満たす上、事業費が他案とくらべても安価であることが決め手となっています。導入コストだけで見れば案2:熊本市電案が安価(案1:330億~380億に対し、案2:210億~230億)と安価であったが、当初より懸念された輸送力の低さやバス以上に到着時間を要することから要件を満たさないとの事で採用には至りませんでした。 3-2.モノレール案は導入費用がネックとなり廃案そして本題の案3:モノレール健軍線案ですが、こちらも採用には至りませんでした。その最大のネックは莫大にかかると想定される事業費です。概ね2500億~3000憶とJR案の約10倍もの費用がかかるとなっており、採算性が見込めないことから見送りとなっています。また、JRは通過するルート次第で6900人/日の利用客が見込める中、モノレール案ではこれ以上の乗客数が見込めないことも見送りの理由とされています。 3-3.現在実現に向け準備中案1確定後の動きですが、2018年の確定後、JR九州との調整の結果、2019年2月に正式合意となり、今後、建設に向けた具体的な競技を進めている段階にあります。しかしながら、その後に発生したコロナウィルス蔓延による公共交通機関の急減もあり、現時点での着工、開通予定は未定の状況のようです。熊本地震というアクシデントが後押しをした熊本空港への鉄道開通計画は、くしくも世界的なコロナウィルス蔓延というアクシデントによってまた足踏み状態になっています。 4.まとめいかがだったでしょうか?今回は都市部交通の利便性向上ではなく、空港との間を結ぶ交通手段としてのモノレールという事例をご紹介いたしました。このケースは結果的にコスト面の問題で導入には至りませんでしたが、自治体としては正しい判断をされたパターンだったかと考えます。現在はコロナウィルス蔓延による交通機関利用の激減により再度計画が足踏み状態となってはいますが、熊本地震の復興のシンボルとして、いずれこの路線は開通することでしょう。県民としては復興のシンボルとして出来るだけ早期の開通を願っている方がおおいのではないでしょうか? |
PC用