ダイジェスト版
1.ゆいレールてだこ浦西延伸区間を歩く(2017年3月)沖縄都市モノレール、通称ゆいレールの名で親しまれる沖縄の軌道系交通機関。現在、起点の那覇空港駅から終点の首里駅までを結んでいます。 このゆいレールでは2017年現在、終点の首里駅以降、てだこ浦西駅までの4.1km4駅の延伸工事に着手しており、2019年の開業を目指し工事が進められています。 ゆいレールの正式名称である沖縄都市モノレールという名前からも分かるとおり、同線は都市計画(都市モノレール法)に則た整備が前提となっています。 都市モノレール法とは、新たに設置するモノレール軌道を道路の一部と見なし、国からの補助を導入して整備を進めるというものです。 よって都市モノレールでは、全線が下部を併走するいずれかの都市計画道路に帰属する事となります。 今回のてだこ浦西駅までの延伸整備については、以下一覧に示す都市計画道路がこの帰属線に該当します。 那覇市道 3・3・17号 石嶺線 浦添市道 3・2・浦1号 沢岻石嶺線 浦添市道 3・3・16 号 国際センター線 沖縄県道 3・4・54号 城間前田線 沖縄県道 3・2・14号 浦添西原線※ ※浦添西原線区画は、モノレールの延伸と合わせて新たに建設が進められる浦添西原線1号線脇に位置する「てだこ浦西駅」から、ゆいレール唯一のトンネル区間となるボックスカルバート部区間までが該当します。今回のゆいレール延伸ルート上において、唯一完全に新設される都市計画道路となります。 もっとも、実際のモノレール営業運用において、「モノレール=道路の一部」である事を認識しながら利用する乗客はほぼ皆無に近いと考えられます。 余談ではありますが、上述した都市モノレールは軌道法による整備であることから「軌道」に位置付けられます。これに対して、法律上も「鉄道法」によって分類される、いわゆる「鉄道」は、「軌道」に対して「鉄道」として扱われます。 今日新たに新設されている「モノレール」は、基本的にこの都市モノレール法を用いた都市モノレールとして建設されています。 つまり、この都市モノレール法が制定される以前に建設されたモノレールと、ゆいレールを含む制定後のモノレールでは軌道と鉄道の扱いが異なるという事です。 繰り返しになりますが、ゆいレールは「軌道」に分類されます。 軌道=道路の一部という事を前提とすると、都市モノレールの延伸(または建設)整備において、下部を走る都市計画道と別に物事を語る事はナンセンスと言えます。 次項より、ゆいレール延伸ルートの散策について記事を掲載していますが、上記事由によりコメント中にたびたび都市計画道路名称が登場します(見難いとは思いますが、何卒ご了承下さい)。 |
ゆいレールの延伸ルート概略図 沖縄都市モノレール「ゆいレール」 |
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2.てだこ浦西延伸 既存終点駅「首里駅」2017年3月17日〜19日にかけて、ゆいレールてだこ浦西延伸ルート撮影のため沖縄県は那覇を訪問しました。以下に撮影および延伸ルートの現在の様子をお伝えします。 ゆいレールてだこ浦西駅延伸ルートを散策するため、ゆいレールの既存終点駅である首里駅へ降り立ちました。 ここから延伸ルートの散策を行います。 当方の都合ですが、前回の延伸ルート散策(2015年)から一年以上が経過してしまいました。 延伸用軌道および帰属する都市計画道路がどの様に様変わりしているのがとても気になります。 それでは、早速延伸ルートの散策に出発します。 |
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ゆいレールの終点、首里駅を出て北東方面へ歩くこと数十秒、汀良交差点に差し掛かりました。 ゆいレールのてだこ浦西駅への延伸ルートは、まずはこの交差点より北方向へ進みます。
交差点より延伸方向を見ると、画像付近までPC軌道桁が設置されている事が目視で確認できます(下写真)。
現在の首里駅先の軌道末端部と上写真の軌道末端部とは鋼軌道桁と呼ばれる鋼製のレールを使用します。交差点上横断部はPC軌道桁(コンクリートレール)ではスパンが長くなりすぎ、モノレール車両の荷重ならびに死荷重に耐える事ができません。 このため、PC軌道桁ではなく、鋼製の鋼軌道桁が用いられます。 |
現地点〜次駅までの散策(ゆいレール)延伸ルート概略図 ここから新設中間駅となる「石嶺駅」と「経塚駅」手前までの区間は、都市計画道路 那覇市道 3・3・17号石嶺線に帰属する区間となります。この、都市計画道路 那覇市道 3・3・17号石嶺線上のモノレール延伸部は、ゆいレールの延伸工事が開始された直後より各種の整備(道路整備や支柱建設)が開始された区間でもあります。 この後画像で紹介する「りうぼう」付近は、特に早々に支柱工事が開始された箇所で、同時にゆいレール延伸工事中最初にPC軌道桁が据え付けられた箇所でもある記念すべき区間となっています。 |
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延伸区間方面へ向かい途切れたモノレール軌道桁の末端部。 モノレール営業線、最後の軌道を支えるのはP586支柱 延伸ルートでは、これより順次P587支柱以降の支柱Noが割り振られる事となります。 |
那覇市道 3・3・17号 石嶺線 汀良交差点より石嶺駅方向を見る。 2015年訪問時は形すらなかったゆいレール延伸区間に支柱が登場していました。 加えて、既に設置が開始されたPC機動桁も一部で据付が完了しています。 |
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那覇市道 3・3・17号 石嶺線 ゆいレール石嶺駅方向を見る。 汀良交差点先の小丘を登った後、今度は写真の様な下り勾配に転じます。 |
那覇市道 3・3・17号 石嶺線 りうぼう前付近。 |
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那覇市道 3・3・17号 石嶺線 今回の訪問では、写真に写っている様にモノレール延伸部用の支柱が既に完成していました。 汀良交差点先の小丘を下りきった位置より撮影。 |
左写真の2015年10月時点の様子。 コンクリート打設真っ最中でした。 |
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那覇市道 3・3・17号 石嶺線 支柱上部を見ると、ここにも既にPC軌道桁が設置されていた。 |
ここまで延伸区間で、既に多くの軌道桁(モノレールのレールに相当するもの)の設置が完了していました。 なお、今回のゆいレール延伸区間に設置されるPC軌道桁は、現行営業線で主に用いられている20m長の軌道桁から、22mの軌道桁に変更(スパン拡大)されています。 設置工数削減による整備費用の削減が図られる他、支柱間長の拡大によって景観性および日照の点でも環境影響への配慮が成されています。 延伸散策に戻ります。 ここまで那覇市道 3・3・17号 石嶺線を石嶺駅方向へ歩いてきましたが、ようやく延伸ルート新設第1駅となる「石嶺駅」予定位置が見えてきました。 |
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3.てだこ浦西延伸 新設第1駅「石嶺駅」延伸ルートを歩く事およそ30分。「石嶺駅」建設予定位置に到着しました。静止画の撮影や動画撮影を行いながらここまで来たため、実際早歩きでは10〜20分程度で到着するのではないでしょうか。 とはいえここまでの道のりはアップダウンの連続(高低差があり)で、この道を毎日通勤や生活の中で歩くというのは、なかなかしんどそうです。 |
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那覇市道 3・3・17号 石嶺線上に姿を現した「石嶺駅」建設予定位置 |
駅舎および駅構内部のモノレール軌道桁を支える支柱は鋼製。 写真に写るRC支柱が、駅手前までの最後のコンクリート製支柱となります。 ゆいレール延伸区間に新設される駅は、いずれも島式ホームを採用予定。 よって上写真の支柱の様に、駅舎前後のRC支柱はモノレール軌道が描くクロソイド曲線を支持するために、支柱頭部が横方向に広がった形状を有します。 |
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「石嶺駅」建設予定位置 石嶺駅を支える鋼支柱の建設中の様子が写っています。 道路(那覇市道 3・3・17号 石嶺線)左側が、石嶺駅の交通広場として整備される予定の区画。 |
進行方向より左側(写真中央部)が石嶺駅駅前広場の予定地。 2014年10月時点では駐車場として使用されていましたが、2017年現在では、この区画でも整備が進められていました。 |
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てだこ浦西延伸 新設第1駅「石嶺駅」の完成イメージ |
石嶺駅の交通広場として整備される予定区画には、石嶺駅駅舎下部工の支柱パーツが仮置きされていました。詳細は各区間毎の写真集にてあらためて掲載しますが、近寄ってみると、やはり相当大きな構造物でした。 |
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石嶺駅先に位置する石嶺団地入口交差点。 この交差点を右折すると石嶺団地に到達します。 |
石嶺団地入口交差点先の延伸ルートを撮影。 既に経塚駅へと続くRC支柱が建設されていました。 写真手前の支柱から推定するところ、石嶺交差点横断部には鋼軌道桁が採用される様です。 (上部台座部分が手前と奥手で高さが異なっている事が見て取れると思いますが、これは設置される軌道桁の高さサイズの違いによるものです。PC軌道桁に対し、鋼軌道では補強のために構造物下部に補強ボックスが配されます。このため鋼軌道桁では軌道高さが高くなり、台座も深い位置となります。) |
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てだこ浦西延伸 新設第1駅「石嶺駅」予定位置を通過し、次駅となる「経塚駅」建設予定位置を目指します。
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石嶺駅〜次駅「経塚駅」までの散策(ゆいレール)延伸ルート概略図 新設第2駅となる「経塚駅」。 当駅周辺では、都市計画道路 那覇市道 3・3・17号石嶺線、 浦添市道 3・2・浦1号 沢岻石嶺線および浦添市道 3・3・16 号 国際センター線の3路線に帰属する多重変異区間となります。 |
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石嶺交差点に到達しました。 ゆいレール延伸区間がここまで帰属してきた3・3・17号 石嶺線はこの交差点まで。正面に見えている割掘構造部から浦添市道 3・2・浦1号 沢岻石嶺線となります。 絶句です。右側が2015年10月時点での同位置付近より撮影した画像ですが、まるで別物の交差点になっていました。 さらに切土された谷間には、既にモノレール延伸用の支柱が設置されていました。 |
2015年10月時点の石嶺交差点 横方向に走る道路は、県道宜野湾南風原線。 |
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浦添市道 3・2・浦1号 沢岻石嶺線区画となる割掘構造部。当初はボックス構造による都市計画道路となる予定でしたが、ゆいレール延伸決定に伴い、割掘構造へと都市計画変更が成されました。ゆいレール延伸ルートが帰属する浦添市道 3・2・浦1号 沢岻石嶺線は、ほぼ写真に写る割掘構造部分のみ、つまりこの後帰属が移る、浦添市道 3・3・16 号 国際センター線への接続のみに使用される都市計画道路という事になります。 |
ボックス構造から割掘構造へと変更された背景には、写真に写っているモノレール用支柱の存在があります。モノレールの支柱を建設するためには、都市計画および都市モノレール法に則り、道路の拡幅(歩道および中央分離帯幅員拡幅)が必要となりました。当初予定としていたボックス構造では、この条件を満たすことが出来ないため、平成25年12月に浦添市告示によって都市計画の変更が成されました。 |
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浦添市道 3・2・浦1号 沢岻石嶺線(浦添市内間一丁目〜那覇市首里石嶺町三丁目)を抜けたゆいレール延伸ルートは、写真手前の交差点で進路を東(右折)に取り、経塚駅を目指します。同時に帰属する都市計画道路は、浦添市道 3・2・浦1号 沢岻石嶺線から浦添市道 3・3・16 号 国際センター線へと移ります。 |
左写真の2015年10月時点の様子。 |
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4.ゆいレールてだこ浦西延伸 新設第2駅「経塚駅」浦添市道 3・3・16 号 国際センター線へと入ったゆいレール延伸ルートは、この後直ぐに「経塚駅」へ至ります。 |
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「経塚駅」外観 |
前田トンネルより見たゆいレール「経塚駅」。 前田トンネル方向よりP675LR(奥)およびP676支柱(手前)。 |
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ゆいレール経塚駅と前田トンネル。 |
経塚駅〜次駅「浦添前田駅」までの散策(ゆいレール)延伸ルート概略図 ゆいレール延伸ルートにおける経塚駅〜浦添前田駅間は、ほぼ浦添市道 3・3・16 号 国際センター線に帰属する。 |
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経塚駅を出たゆいレール延伸ルートは、直後に待ち構える前田トンネルをトンネル上部で越丘します。 前田トンネル丘上への登坂部では、50‰近くの勾配で上り切り、さらにトンネルの反対側では60‰近くにもおよぶ勾配を下ります。 |
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前田トンネル以降の浦添市道 3・3・16 号 国際センター線区画では、2017年3月現在も支柱工事が進められていました。 |
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既にPC軌道桁までの設置が完了する区間も多く見られた。 写真は、前田トンネルからほどない距離の区間。 |
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こちらの現場では支柱部の建設が進められていた。 奥手が浦添前田駅へと右折する交差点位置。 |
浦添前田駅の駅前広場となる周辺位置では交差点右折部の支柱建設が進められていた。 |
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5.ゆいレールてだこ浦西延伸 新設第3駅「浦添前田駅」浦添市道 3・3・16 号 国際センター線区画を走破したゆいレール延伸ルートは、浦添警察署が位置する交差点で東に進路を変える事となります。国際センター線より沖縄県道 3・4・54号 城間前田線へ帰属道路を変更したゆいレール延伸区間は、直後に「浦添前田駅」に到達します。 交差点の内側は浦添前田駅の交通広場となる予定で、浦添前田駅設置予定地と合わせて造成工事が進められていました。 |
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建設の進む浦添前田駅駅前交通広場と支柱 |
浦添前田駅に至る区間の支柱工事の様子 |
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現場に掲載されていた浦添前田駅のイメージパース |
浦添前田駅を出たゆいレール延伸ルートは、直ぐにグラウンドレベルからトンネル区間に突入する。 |
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トンネル区間導入区間の様子 |
浦添前田駅〜次駅「てだこ浦西駅」までの散策(ゆいレール)延伸ルート概略図 この区間の見所は、なんといってもゆいレールでは初となる地下(トンネル)区間の存在。トンネルを出たモノレールルートは、直ぐに最終駅となるてだこ浦西駅に到達する。 |
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トンネル部入口の様子。 このトンネルに吸い込まれたゆいレールは、最終的のてだこ浦西駅直前で地下区間を脱出する。 |
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ゆいレール延伸区間である沖縄県道 3・4・54号 城間前田線帰属区間はここまで。 以降は沖縄県道 3・2・14号 浦添西原線へと移ります。 ボックスカルバート部(地下)より帰属する浦添西原線区画は、モノレールの延伸と合わせてこの先に新たに建設が進められている道路本体(浦添西原線1号橋)とその脇に設置が予定される「てだこ浦西駅」から成ります。 |
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ボックスカルバート部地上部分。 アルファルト上に箱番号が記されている。 |
冒頭軌道法について触れましたが、軌道法による鉄道の分類としては併用軌道と新設軌道にさらに細分化する事ができます。 併用軌道とは、道路上に軌道を敷設する場合を指し、新設軌道とは道路とは別の構造物にて専用道を敷設する場合を指します。 一般的に併用軌道とは「路面電車」、新設軌道とはモノレールや新交通システムがこれに該当します。 新設軌道となるモノレールでは、道路上の空中空間に専用軌道(レール)を設け、モノレールを運行する運営会社がこれを占有的に使用し軌道業を営む形態が取られる事が一般的です。 新設軌道は、空中空間に敷設する専用道に限定されるものではなく、地下空間も対象となります。 今回のゆいレールてだこ浦西延伸区間上の浦添前田駅〜てだこ浦西駅間にも地下トンネル区間が登場しますが、上述した様にこのトンネル区画も新設軌道として設置されます。 |
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てだこ浦西駅周辺は丘下部に位置しています。 写真はトンネル工事の入口抗付近の様子。 |
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ゆいレール延伸ルートのトンネル断面の構造図 (標準断面図) |
ゆいレール延伸ルートトンネル区画 工事現場入口に工事概要が記された看板が設置されていた。 |
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6.ゆいレールてだこ浦西延伸 新設第4駅「てだこ浦西駅」ゆいレール全線、そしてゆいレール延伸ルートの終着駅となる「てだこ浦西駅」。 |
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てだこ浦西駅のイメージパース。 現地にて掲載されていたもの。 |
てだこ浦西駅は、今回のゆいレール延伸区間における終点駅。 駅の西(手前)側には、新たに分岐橋および分岐器が設置されます。 分岐器とは、往路および復路の線路を切り替える装置(レール)の事を指します。 首里駅方よりてだこ浦西駅へとやってきたゆいレール車両は、てだこ浦西駅で進行方向を逆にとり首里駅(那覇空港駅)方向へと帰っていきます。 この際、下り線から上り線へと進路を変更する必要が生じるわけですが、この分岐器によって下り線から上り線へとモノレール車両が渡る事で復路へ付く事ができます。
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てだこ浦西駅直前に新たに設置される分岐橋および分岐器。 撮影時点では下部工の工事が進められていました。 写真右手には建設工事が進められる浦添西原線1号橋の姿が見えます。 |
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浦西分岐橋下部工付近の現在の様子。 |
てだこ浦西駅軌道末端部位置より見た浦西分岐橋およびトンネル出口付近の様子。 |
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浦添西原線1号橋整備工事脇に登場したてだこ浦西駅の駅舎 正確には、てだこ浦西駅自体の姿ではなく、駅先の軌道末端部付近の支柱となります。 |
てだこ浦西駅先の軌道末端部位置の様子。 てだこ浦西駅の建設に先行して、既に軌道末端部を支える支柱は完成していた。 |
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ここまで、ゆいレール延伸ルートを散策してきましたが、記事自体は以上となります。 別途、各区間ごとの画像集を近くアップする予定にしています。 繰り返しになりますが、ゆいレールてだこ浦西駅の延伸部を含む全線開業は2019年春が予定されています。 前年(2018)度には各種艤装〜試運転までをこなす必要があります。 よって、外観上の完成は遅くとも2018年前半頃が予想されます。 当サイトでは、工事の進捗を見つつ再度延伸ルートの散策を実施する予定としております。 最後までご覧下さり有難うございました。 |
ゆいレール車両 |
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