1.「ゆいレール」琉球大学方向延伸の可能性を考える。沖縄都市モノレール 通称「ゆいレール」は、起点となる那覇空港駅から終点の首里駅まで12.9km、15の駅を繋ぐ都市モノレール。既存の営業線(沖縄都市モノレール線)は2003年8月10日に開業を果し、市県民の生活にとって、無くてはならない交通手段となっています。今現在、既存ルートの終点となる「首里駅」よりさらに延伸させ、「てだこ浦西駅」までの4.1kmが整備中となっており、開業は2019年が予定されています(図1)。
インフラ部下部工も大詰めを迎え、ここで気になるのは「てだこ浦西駅」開業以降のさらなる整備ルートについて…。 一般的に話題となるのは、将来的な延伸が期待される名護市、沖縄市方向への延伸。そして、最も身近な個所では、てだこ浦西駅直東、沖縄自動車道を越えた先に配置される琉大病院・琉球大学等の文教区までの延伸という事になります。 ゆいレールには、既存の営業線が建設された当時より首里駅以降、沖縄自動車道付近までの延伸計画が存在しました。2008年にはルート選定協議会によって延伸ルートの選定結果が示され、翌2009年からは具体的な調査に入る事となりました。2011年8月、既存営業線の終点である首里駅から当時仮称であった浦西駅までの軌道特許を取得。翌2012年1月25日に認可され、建設工事に着手する事となりました。
てだこ浦西までの延伸ルート2案首里駅よりてだこ浦西駅に至る延伸ルートには、最終的に2案が示されました。一つは現在工事中のルート浦添案、もう一つは国際センター線改良案です。浦添案に決定した理由の一部には将来の宜野湾方向への発展性が挙げられており、少なからずてだこ浦西駅以降への延伸の可能性を考慮したものと考えられます。浦添案はその線形より、都市計画道路3・2・14号浦添西原線に沿うルートが必然となるため、以降の延伸時は直後に構える沖縄自動車道を直交に越道する必要が生じます(図2)。
沖縄都市モノレール(ゆいレール)は都市モノレールとして整備されています。つまり軌道法で整備される事から、さらなる延伸のためには帰属する都市計画道路が必要であるという事になります。さらに都市モノレール併設のためには道路復員が必要である事から、将来的に需要の見込まれる道路または都市計画に乗っ取った都市計画道路の存在が重要となります。 この点を踏まえ、沖縄自動車道以東の都市計画の状況を見てみる必要があります。 図3に沖縄自動車道以東琉球大学周辺までの都市計画道路と周辺状況を示しました。
新たな終点となる「てだこ浦西駅」以東直近には29号線に沿って、キリスト教学院大学を皮切りに、琉大病院、琉球大学等主要文教区域が配置されている事が分ります。そしてこの文教区とてだこ浦西間を繋ぎ、西原町を南北につらなるのが上述した29号線(都市計画道路翁長上原線)。
都市計画道路翁長上原線が配される西原町においては、この都市計画道路周辺において西原西地区区画整理事業が進められており、琉球大周辺に位置する中城村周辺では同様に南上原土地区画整理事業が進められています。 いずれも都市計画道路の計画幅員は30mとして整備が進められており、都市モノレールの導入区間として受け入れが可能な状況にあると言えます。 ここまで、てだこ浦西駅〜琉球大周辺に至る全体感を見てきましたが、今度はてだこ浦西駅〜沖縄自動車道越道付近に着目して見ていきたいと思います。 そもそも、さらなる延伸を行うという事項は既存設備がそれに対応しているかという事がとても重要です。モノレールインフラ部のみならず、今回の例では直後の都市計画道路が延伸に耐えうるものなのか、それを許す状況にあるものかという点が可能性の上下値を大きく左右すると言えます。 既存設備に見るゆいレール延伸の可能性まずモノレールインフラ側についてですが、結論から言うと延伸が可能な様考慮して整備されていると言えます。その証拠の一つが、てだこ浦西駅までのルートの選定にあります。当初もう一案として示されていた国際センター線改良案に対し、浦添案(現行案)では直後の沖縄自動車道越道後、自動車道手前まで帰属する都市計画道路3・2・14号浦添西原線とさらに並走し、その後琉球大学方向に抜ける都市計画道路3・2・16翁長上原線に帰属する事ですんなり想定される延伸ルート上に乗る事ができるためです。対する国際センター線案では、都市計画道路3・2・14号浦添西原線道路橋を越境する事項や、沖縄自動車道との並行線形よりこれを跨ぐ必要が生じるため、前者ルートと比較して構造上デメリットが少なからずあると言えます。
上記と並行してもう一点として挙げられるのが以降の周辺都市計画と都市計画道路。 図4に坂田交差点周辺の都市計画図を示します。 現在整備が進められている都市計画道路3・2・16翁長上原線と、てだこ浦西駅およびモノレール専用道が帰属する都市計画道路3・2・14号浦添西原線とは、線形改良が施される坂田交差点にて合流する格好となります。 てだこ浦西駅以東モノレール専用道が配されると想定される導入区間は、現在の所近隣商業施設として都市計画されており、都市計画道路3・2・16翁長上原線に帰属変更する場合、図中に示す青点線部がモノレール導入ルートになると考えられます(mjws編集室想定)。(上述した近隣商業施設区域は赤色でハッチング)
最後の一つが、今現在整備が進められている「てだこ浦西駅」周辺の付帯設備。 特に重要なのが、てだこ浦西駅手前に配置される分岐器構造です。浦西分岐と呼称されるこの分岐器設備は、てだこ浦西駅を終端とするモノレール上下線の往路および復路を入れ替える設備として機能します。 一般にモノレール終端部では、分岐橋が一つで済む両渡線分岐器が採用される傾向が強いわけですが、さらに延伸の可能性が考えられるモノレール路線末端部では、方渡線二機を採用するケースが目立ちます。 以下に両渡線および方渡線分岐器を示します。
対して方渡線分岐器(写真右)は、正方向時は上下線のすれ違い運転が可能である反面、上下線入れ替えのためには分岐ユニットが2組必要となる、すなわちベースとなる分岐橋も2基必要となるためコストが増加するデメリットがある。 上述したメリット・デメリットによって、両渡線では主に以降の延伸が考えにくいルート末端部駅に配置され、以降の延伸が考えられるルート末端部駅では方渡線を採用する傾向にあると言える。 話をてだこ浦西駅に戻すと、てだこ浦西駅に設置される分岐器構造は「方渡線分岐器2組」。 つまり・・・実現可否は別として、将来の延伸にも十分対応できる構造を取ったという事を意味している。 宜野湾方面への将来延伸構想宜野湾方面への延伸も考慮される沖縄都市モノレールながら、この点について現時点では普天間飛行場移設問題も絡み早急に進展する事は考えにくい。まずは首里駅〜てだこ浦西駅間4kmと同様長である、琉球大方向およそ4kmの延伸が現実的な可能性として考えられそうだ。 mjwsでは、サイトの方向性と一致するモノレールを都市交通機関ならびにインフラ面として見た場合の延伸の可能性について調査を続けていく。 とくに琉大方向へ延伸した場合、モノレールルートが帰属する事になるであろう都市計画道路3・2・16翁長上原線の整備状況については、一定間隔で取材を続けていきたいと考える。 |
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さいごに・・・ てだこ浦西駅までの延伸も未だの状態で、いったい何の記事なのかと思われる方もいらっしゃるかとは思います。 しかしながら、都市モノレール等都市全体の計画として進められる大型インフラにおいては、数年、引いては数十年単位で考えていく必要があります。首里駅〜てだこ浦西駅までの延伸事業においても、協議開始となった2008年をスタートと考えた場合、4.1kmの開業に実に10年強を要したという事になります。 軌道系交通機関を有効かつ有益に活用し、沖縄県の発展に寄与するためには路線の延長増は必須です。 特に現時点で、軌道系交通機関の接続がない琉球大学への延伸は、地域の発展、学生の移動需要が見込まれます。 これらもさる事ながら、周辺から那覇都市部へ流れる自動車交通の抑制に直結し、市内交通渋滞の緩和に少なからず寄与するものと考えられます。 |
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