さて、前テーマ既出となってしまいましたが、上北台駅軌道末端部はこの後交差点を左折するカーブ区間において鋼軌道が設置される事となります。
写真1 上北台駅軌道末端部 |
現在、多摩モノレールの北側軌道最末端部を支えるP18-6支柱(写真2)。
実は、この支柱上部に設置される支承部の構造にその答えが示されています。
2-1.モノレール軌道桁支承
支承とは、モノレール軌道桁を支柱上部で支持する台座部分の事です。
支承構造はPC軌道桁および鋼軌道桁共に、基本的には同じ機構を備えていますが、台座高さは軌道の種類によって差がでてきます。
写真3 多摩モノレール上北台駅軌道末端部 |
モノレールの軌道桁は基本的に、PC軌道桁か鋼軌道桁を用いますが、両軌道桁の用途の違いとして軌道桁長が挙げられます。
PC軌道桁では軌道桁長が20~22m程度の支間長区間に用いられ、それを越える支間長においては、荷重に耐えることのできる鋼軌道桁を用います。
支間長が大きくなる区間とは具体的に、交差点や橋梁部、および曲線半径の狭いカーブ(交差点上部)等がそれらに該当します。
鋼軌道桁の断面は、停留場および車庫内区間などの単線部を除いて、通常、各単線の鋼軌道桁を両側に配置し、その間をI形横桁および平面トラス横構で補強する構造が取られています。両側鋼軌道桁は鉛直荷道、横構トラスは水平荷重による応力を伝達します。
このため、鋼軌道桁はPC軌道桁に対し複雑な構造を持つだけでなく、軌道桁高さもPC軌道桁より大きなものとなります(図2)。
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写真2 多摩モノレール北側軌道最末端部を支えるP18-6支柱
図1 写真2撮影位置
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図2 PC軌道桁および鋼軌道桁断面 |
2-2.延伸の始まりは鋼軌道桁から
これらの点を踏まえ、改めて軌道末端部を見直します。
写真3および4に上北台駅軌道末端部分およびPC軌道桁台座部分を示します。
PC軌道桁を支える支承台座部分に着目していただくと、支承を支える台座部分が支柱上部分より更に上げ底になっていると思います。
対して、交差点側より見た上北台駅軌道末端部分およびPC軌道桁台座部分の様子を写真5に示します。
先ほどとは逆に上げ底構造になっていない事が確認できます。
これが、以降に設置されるモノレール軌道桁が鋼軌道桁となる事を示している証拠です。
上北台駅軌道末端部分を支えるP18-6支柱(および上部分)は、PC軌道桁に対して軌道桁高さが大きくなる鋼軌道桁の断面に合わせて上部分高さが設計されています。
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写真4 上北台駅軌道末端部分およびPC軌道桁台座部分
(上北台駅方向より見る) |
写真5 上北台駅軌道末端部分およびPC軌道桁台座部分
(交差点側より見る) |
なお、この逆のパターンが多摩センター駅軌道末端部でも示されています。
多摩センター駅先の軌道末端部は、現在鋼軌道桁で途切れています(写真6)。しかし、その反対部分の台座部分は、先ほどから紹介している上げ底となっているのです(写真7)。
多摩センター以南には、町田方向および八王子方向への延伸計画が存在しますが、末端部より先に設置される軌道桁種類について、少なくとも一本目はPC軌道桁になる事が推定されます。
ちなみに、現在上北台、多摩センター駅両軌道末端に設置されている制走堤(車止め)は簡易的なもので、多摩モノレール建設時にはよく用いられる制走堤です。多摩モノレール上北台~多摩センター建設時においても立川北駅(第一期終点)~立川南駅(建設時)間等で使用されていました。現在該当区間は全線開業しているため、その時設置されていた制走堤は既に存在していません。
上述した内容から、現在の上北台駅軌道末端より次区間に設置される軌道桁種類は、鋼軌道桁でほぼ確定であると考えられます。
さらに、東京都が示す都市計画、テーマ1.存在しているが見えない?モノレールのレール(モノレール=上空に設置された道路であるということ)および((都市)モノレールとは(都市計画)道路であるという事。)の内容と合わせ考察すると、上北台駅以降の鋼軌道桁は西進への曲線軌道桁となると想定されます。
図3に上北台駅以降のモノレール軌道想定図を示しました。
少なくとも黄色で示す区間においては(曲線形の)鋼軌道桁による敷設となるはずです。 |
写真6 多摩センター駅軌道末端部分および鋼軌道桁台座部分
(多摩センター駅側より見る) |
写真7 多摩センター駅軌道末端部分および鋼軌道桁台座部分
(町田・八王子方面延伸ルート方向より見る) |
図3 上北台駅以降のモノレール軌道想定図 |
2-3.多摩モノレール所沢延伸の噂
なお、多摩モノレール上北台駅以降の延伸計画に関しては、所沢等北方向への延伸計画の話題が尽きません。
しかし、上述した内容から考えると、残念ながら上北台駅周辺の都市計画道路およびモノレールインフラ設備は北方向への延伸は考えられていないものと取る事ができます。
唯一希望を残したのが、上北台駅南側の分岐器構成です。
第一期および第二期における終点駅上北台駅。両番線を使用するため当然の事ながら、片渡り分岐器2組による両線渡り構成となっています。
しかし仮に、上北台駅北側で所沢方面延伸用の支線を設けた場合、上北台駅以西部にて両線の分岐が行える事から、接続駅としての機能を僅かながら残していると言えます。 |
写真8 上北台駅南側の分岐器
(片渡り分岐器2組による両線渡り構成) |