さて、早速ではございますが、第1項「存在しているが見えない?モノレールのレール」に入りたいと思います。
多摩モノレール箱根ヶ崎延伸ルートとは、北側の既存終点駅である上北台駅より西進し、八高線箱根ヶ崎駅付近に至る多摩モノレールの延伸計画ルートのひとつです。
当サイトにいらっしゃる様な熱心な鉄道ファンやインフラファン、または地元の方ならば既にご存知の計画ではあると思います。
今回のシリーズでは、そこまで興味ないよという方やそもそも計画についてご存じない方へ向けたものとして、一つ一つテーマを分けて興味をもっていただける様努めてまいります。当サイトのいつもの体裁とは異なりますが、何卒ご容赦下さい。
それでは本題に移ります。
1-1.多摩モノレール上北台駅軌道末端部
写真1および2に、多摩モノレール箱根ヶ崎延伸ルートの延伸開始ポイントとなる上北台駅の軌道末端部分の様子を示します。
さらに、図1には上北台駅軌道末端部撮影位置、図2には上北台駅軌道末端部周辺概略図を示しました。
写真1 上北台駅軌道末端部拡大写真
(上立野東交差点付近より撮影) |
図1 上北台駅軌道末端部撮影位置 |
写真2 上北台駅軌道末端部
(上立野東交差点付近より撮影) |
図2 上北台駅軌道末端部周辺概略図 |
多摩モノレール箱根ヶ崎延伸に関する記事では、範囲の差こそあれ同様の写真が広く用いられています。
記事によっては、モノレール軌道桁(モノレールのレール)が若干左(写真方向では右手(箱根ヶ崎方向))に曲がっており、「箱根ヶ崎方面への延伸を考慮した作りになっている」、または「なっているのでは?」と記載されているものも見かけます。
少なくとも後者の記載の仕方では、延伸方向が推定域を脱していません。
今回のシリーズ【上北台駅周辺解説-モノレール軌道末端周辺の散策を面白くする4つのポイント-】では、多摩モノレール箱根ヶ崎延伸とそれに関する資料を元に現地散策を行い、これらの「うわさ」について4テーマに分け検証いたしました。
1-2.多摩モノレール箱根ヶ崎延伸と都市計画道路
今回のテーマの主役となっている多摩モノレール上北台駅軌道末端部は、上北台駅がその道路上に位置する芋窪街道(東京都道43号立川東大和線都市計画道路立川3・3・30号線)および新青梅街道(都市計画道路3・2・4号線)との交差点「上立野東交差点」の若干南側に位置しています。
後のテーマで詳細については触れますが、多摩都市モノレールは法律上において、いわゆる「都市モノレール」とよばれる軌道に該当し、軌道法によって管理運営されます。
軌道法によって管理運営される都市モノレールは、一般的にイメージする「鉄道」とは異なり、「道路」の一部とみなされるわけです。
このため都市モノレールの建設計画は、下部に敷設される「都市計画道路」と対に計画設計が成される事になります。
多摩都市モノレール箱根ヶ崎延伸計画も例外ではなく、同延伸ルートがベースとする芋窪街道や新青梅街道の都市計画上に道路の一部「モノレール専用道」として計画設計されます。
つまり、都市モノレールを設置しようとする都道県市町村の都市計画資料上において、既に都市計画決定および基本設計等(都市計画道路)が済んでいる段階においては、モノレール専用道の概要が示されている場合があります。
これらを踏まえ、本テーマの結論を先にまとめます。
・モノレールの軌道は既に箱根ヶ崎方面(新青梅街道)へ向けられています。
・モノレールの軌道は現在の軌道末端部で終わってはいません。
なぞなぞの様になっていますので、以下より説明および図を示していきます。
1-3.モノレール延伸ルートは既に箱根ヶ崎へ向いている。
確かにモノレール軌道の構造物としてはここで終わっています(目に見えるのはこの部分まで)。
が、実際には少し先まで都市計画道路上は存在しています。この事を図3に示しました。
写真3 上北台駅軌道末端部車止め
(上北台駅ホームより撮影)
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写真4 上北台駅軌道末端部車止め
(下部歩道より撮影) |
図3 上北台駅軌道末端部周辺都市計画道路と将来のモノレール延伸ルート |
上北台駅以降は多摩モノレール計画当初より箱根ヶ崎までの延伸計画が存在しました。このため、将来延伸した場合を考慮し、新青梅街道方向へ進路を取れるようあらかじめ設計されています。
この事は、次テーマより続けて紹介する
2.末端部より先に設置されるモノレール軌道の種類は既に決まっている
3.上北台駅先に存在する不自然な形状をした駐輪場
4.新青梅街道沿いの駐輪場の正体
の3テーマすべてに関係してくるのですが、これは後ほど紹介いたします。
モノレールは、特殊な場合を除きPC軌道桁※を用います(※コンクリートのレール)。
この軌道末端部以降は支柱スパンが長大になる関係で、鋼軌道が設置されます。
(先に記載してしまいましたが、詳細は2.末端部より先に設置されるモノレール軌道の種類は既に決まっているを参照下さい。)
この鋼軌道桁は製作プロセスと軌道を支える設置支柱の位置関係で、基本的に一体物で製作されます。
該当区間の鋼軌道の場合、途中まで作っておくという事が基本的に出来ないため、計画道路としては若干先まで存在するものの、この手前のPC軌道桁部分を終端としたという事になります。
上北台駅が現在の位置(交差点より若干南下した位置)に設置されているのも、実は次区間の設置鋼軌道桁がカーブレールによる敷設によるものだからです。
写真5 上北台駅軌道末端部を上立野交差点より見る。 |
写真6 上北台駅に停車中の多摩モノレール車両 |
それでは、新青梅街道側(更に先の延伸ルート上)まで鋼軌道を設置した(曲げた)状態で軌道末端部を設置すれば、という意見も聞こえてきそうですが、これ以西の都市計画道路はこの時点では決定していませんし、当時は新青梅街道の拡幅計画(都市計画)はあっても認可が下りる以前の事でした。
(ベースとなる都市計画道路「新青梅街道整備(拡幅)」が成されないとモノレールはそもそも建設できません。)
重ね重ねになりますが、これらの理由から、現在のPC軌道桁末端部分がレールの終端部分になったものと考えられます。
そもそも、(都市)モノレールとは(都市計画)道路と同意である事は当頁冒頭で記載しました、次ページではこれに関して簡単にテーマとしてまとめました。
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