跨座型モノレールのレール
4.跨座型モノレールのレール(軌道) 跨座型モノレールのレール(以下、軌道桁と略記)は,大きく分けてコンクリート製と鋼製の2種類に分かれます。 (1)桁長 跨座式モノレールでは軌道桁がすなわち軌道(鉄道におけるレール)となります。 モノレールの軌道は、標準桁長20~22mのプレストレストコンクリート桁(以下、PC軌道と略記)を標準桁として用います。 現在主流となっている標準桁長は、桁幅×25倍(コンクリート標準示方)によって算出された800mm=20m、850mm=21.25mが基準となっています。 支柱の短間隔での設置が困難な場合、軌道スパンが大きくなってしまう交差点進入部および河川線路等横断部では鋼製の軌道桁(以下、鋼軌道と略記)が多く用いられます。 その他、横荷重に対応させるため、片勾配が必要な曲線区間においても鋼軌道を用いる場合があります。 鋼軌道桁を用いた場合でも軌道桁長が不足(長尺方向の強度不足)する場合は、高架橋とモノレール軌道とを組み合わせたモノレール橋を用いる場合もあります。モノレール橋の場合、長尺方向の支持部分を高架橋に敷設し、その支承部にPC軌道桁または鋼軌道桁を据え付ける構造となります。このため、実際には高架橋部とPC軌道桁および鋼軌道桁は独立した部位として設置されます。 以下に各軌道桁およびモノレール橋における桁長、採用箇所および採用例の一覧を示しました。
(2)桁幅およびサイズ アルウェーグ式モノレールでは、マニュファクチャラーおよび規格の違いによって実に様々な軌道桁断面サイズが存在します。 各マニュファクチャラーおよび規格違いにおける(PC軌道桁)軌道桁断面サイズ一覧を図に示します。 図中に示すだけでも9種類もの軌道桁サイズが存在する事が分かりますが、この他にも近年モノレールシステムの開発を進める中国およびアジア諸国のマニュファクチャラーによって、さらに軌道桁サイズの種類が増加する事が考えられます。 軌道桁高さは、主に軌道桁幅および軌道桁長さに対応した高さが設定されます。日本国内では、コンクリート標準示方に従い、桁幅×25倍基準がベースとなっています。 このため、800mm幅軌道桁では20m、850mm幅軌道桁21.25mが桁長さ基準として採用されています。 (4-8.項 PC軌道桁のサイズ(日本国内))
4-1.鋼軌道 基本構造を鋼製、支間約40m~としたモノレール軌道桁で、単純桁と連続桁に分類されます。 走行軸方向に、およそ5m間隔に配置した横桁と横溝によって、2つの軌道桁を結合した複線構造を有しています。 特に曲線部に配置される鋼軌道桁では、車両の傾斜に合わせ鋼軌道自体を傾ける構造と、上部走行フランジ、安定面および案内面板にカントを設ける2種類の形式が存在します。 走行面(軌道桁上フランジ)は、勾配が急である場合、走行面に比較的大きな摩擦係数を必要とする状況では、フランジ面に溝付き鋼板を使用する事で必要摩擦係数を確保しています。
東京モノレール等で採用されている合成軌道桁も鋼軌道に大別されます。 合成軌道桁は腰下架台を鋼製とし、桁上面(走行面および案内輪走行面部分)にPCまたはRCプレキャスト版をスタットボルトで固定したものを指します。 鋼軌道(鋼フランジ)では不足する、雨天時および勾配での必要摩擦係数を確保すると同時に、軌道桁上面隅部に通る信号電流の減衰防止を目的としたものです。 4-2.鋼軌道(分岐機等) 進路を変更するための鋼製のモノレール軌道桁装置、分岐器。 モノレールにおける分岐器の存在は、モノレールが今日まで世界中で広く普及するに至った際の最大のファクターであったと言えます。 構造上大掛かりになってしまう事や、保守に掛かる費用等、ネガティブな面を挙げればきりがありません。 今日では、それぞれのモノレールシステムを開発したアーキテクチャーや、それを引き継いだマニュファクチャラーによって様々なタイプのモノレール用分岐器が誕生しています。さらに構造上の分類の他、配置形式によって名称が細分化されています。 4-2-1.構造上の分類 まず構造上の分類についてです。 跨座式モノレールについては、以下に示すタイプの分岐装置が一般的であると言えます。 ①関節式分岐器… 複数の鋼軌道から成り、それぞれの折角を持って進路を変更する分岐装置。 採用路線…多数(主に車両基地内等) ②関節可とう式分岐器… 関節式をベースとしつつ安定面版のみを折角に平行して緩和させ、通過速度および乗り心地を向上させた分岐装置。 採用路線…多数(主に営業路線上等) ③可とう式分岐器… 一本の鋼軌道を物理的(力)に変形させ、進路を変更させる分岐装置。 採用路線…東京モノレール(現在は廃止) ④全可動方分岐器 あらかじめ進路方向AおよびBに造形された鋼軌道をスライドさせ、進路を変更する分岐装置。 ある種のトラバーサ装置の応用システム。 ロッキード式(岐阜試験所および姫路)、ラスベガス、ディズニー等 ⑤トラバーサ 鋼軌道を進行方向より横方向にスライドさせ、進路を変更する分岐装置。 採用路線…セントーサエキスプレス、他工作車基地等にて多数 4-2-1-① 関節式分岐器 最も設置数が多い分岐方式。 特に乗客を乗せた状態で通過しない(車両基地内等の)分岐器に採用される傾向にある(対:関節可とう式分岐器)。 複数の鋼軌道を稼動させ、進路を変更させる分岐装置。
4-2-1-② 関節可とう式分岐器 特にアルウェーグ式モノレールを説明する上で不可欠な分岐方式。 関節式分岐器をベースとしつつ、安定案内輪が進路の誘導を頼る安定面版のみを折角に平行して緩和。 この事により、分岐器通過時のモノレール車両の通過速度および乗り心地を向上させた分岐装置です。 特に営業本線上で使用されます。 これは、関節可とう式分岐器の構造が複雑である上に、関節式と比較して保守費用が大きくなるためです。 基地内等乗客を乗せた状態で通過しない分岐器には採用されない傾向にあります。 (対:関節式分岐器)
4-2-1-③ 可とう式分岐器 今日においては消滅してしまった分岐方式。 以前東京モノレールの一部の分岐器で使用されていた。 一本の鋼軌道を物理的(力により)に変形させ、進路を変更させる分岐装置。 現在も、東京モノレール昭和島車両基地内の留置線として設置されているため、モノレールまつり等で見る事が出来る。
4-2-1-④ 全可動方分岐器 2差(AおよびB)進路が存在した場合、あらかじめ進路方向AおよびBに造形された鋼軌道をスライドさせ、進路を変更する分岐装置。 ある種のトラバーサ装置の応用システムと言える。 国内では、ロッキード式モノレールの姫路市営モノレールで使用されていたが、同線の廃止に伴い後日撤去された。 国外においても、ボンバルディア社主導路線およびディズニーのモノレール路線にて採用されている。 ⑤トラバーサ 鋼軌道を進行方向より横方向にスライドさせ、進路を変更する装置。 分岐装置に分類されないが、進路を変更する装置である事から本項に記載した。 鋼軌道一本をまるまる可動させるという特性から、長編成車両の進路変更には適さない。 2両編成車両で営業車両を運用するセントーサエキスプレスや、各モノレール社においても保守基地内の工作車(保守作業車)の進路変更用として採用されている。 4-2-2.配置上の分類 次に配置上の分類についてです。 跨座式モノレールについては、以下に示すタイプの分岐配置が一般的であると言えます。 ①渡り線(逃し桁付)分岐器… 2差2差間において上り線入り側および下り線入り側(またはその逆配置)を接続する片渡り分岐装置(配置) ②両渡り線付き交差渡り分岐器… 2差2差間を両渡り配置に分岐器を配置した分岐装置(配置) 採用路線…北九州(平和通駅傍)、那覇(那覇空港傍)等 ③シーサス転轍機(シーサス分岐器)… 2差2差間を各直線およびクロッシング方向(各片線接続)に分岐器を配置した分岐装置(配置) 採用路線…東京モノレール 羽田空港第2ビル駅傍 ④複合分岐器… 上記分岐器を複合的に配置した分岐器 採用路線…大阪モノレール(万博記念公園駅傍他多数) 4-2-2-① 渡り線(逃し桁付)分岐器 2差2差間において上り線入り側および下り線入り側(またはその逆配置)を接続する片渡り分岐装置(配置)
4-2-2-② 両渡り線付き交差渡り分岐器 2差2差間を両渡り配置に分岐器を配置した分岐装置(配置) 4-2-2-③ シーサス転轍機(シーサス分岐器) 2差2差間を各直線およびクロッシング方向(各片線接続)に分岐器を配置した分岐装置(配置) 4-2-2-④ 複合分岐器 渡り線分岐器および両渡り線分岐器を複合的に配置した分岐器 支線への分岐(大阪モノレール本線および彩都線)や折り返し線で使用されるケースが多い。
4-3.鋼軌道道における降雪および凍結防止策
※プレストレストコンクリート
4-6.UFC軌道(超高強度繊維補強コンクリート軌道)
4-8.ロッキード式(鉄製弾性車輪方式)モノレール軌道
4-9.モノレール橋 モノレール橋とは、河川や大型の交差点等、鋼軌道桁による延長では建設が困難(強度が不足する大長スパン)な区間において、モノレール軌道桁を下部高架橋によって支持するモノレール用の高架橋の事を指します。 つまり、軌道桁の種類を分類するものではなく、PC軌道桁または鋼軌道桁を支える高架橋部分(単純ボックス)及びその上部に支持されるモノレール軌道桁を合わせた構造物全体を示します。日本国内では、大阪モノレールが淀川を越河する際に通過するモノレール橋が有名です。身近な例ではモノレールの分岐器装置一式を支える支持部(分岐橋)もモノレール橋の一種となります。モノレール橋はいずれの場合も2重構造を有す事から不経済であり、適用範囲は極めて限定的とされます。
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[参考資料] 北九州市立交通化学館 /北九州市立交通化学館(-2003)(2004.3閉館) 北九州モノレール50年のあゆみ展 /北九州市立交通化学館(2004.3閉館) ゆいレール展示室 /沖縄都市モノレール株式会社(2014) 手柄山交流ステーション /手柄山交流ステーション(2015) |
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