懸垂型モノレール-サフェージ(SAFEGE)式モノレール
5.サフェージ(SAFEGE)式モノレール 5-1.サフェージ(SAFEGE)式モノレール 国内では懸垂式モノレールにおいて最もポピュラーとなった方式が、このサフェージ式(以下、SAFEGE式と略記)です。 1975年、フランスのルイ・シャーデンソンが、2本の軌道桁と当時パリの地下鉄で採用されたゴムタイヤ台車による走行システムを組み合わせた懸垂式モノレールを開発しました。 その後、軌道桁は中空の箱型に変更、走行面は準密閉式となります。 密閉空間によって雨雪の影響を受けない地下鉄と、高架化が容易なモノレールの利点を掛け合わせた様な新交通システムでした。 さらに台車は、高速走行時でも安定と快適さを兼ね備えた空気ばね式の振子型サスペンションを装備していました。 タイヤメーカー(ミシュラン)、自動車メーカー(ルノー)等フランス国内の25の企業が共同でフランス企業経営研究株式会社を設立します(Société Anonyme Française d' Etude de Gestion et d' Entreprises )。 つまりサフェージとは、フランスの企業連合 SAFEGEの頭文字をとったものなのです。 フランス国鉄およびパリ交通公団は共同で、フランスのオルレアンの近くのシャトーヌフーシュルーロワールに1.3kmの試験線を建設しました。 工期は1959年4月~1960年4月 その後、1967年までフルサイズ車両を用いた試験が続けられます。 (概観形状は後に登場する東山動物公園のSAFEGE式モノレールと酷似しています。) その後オルレアンの試験線は、1970年~1971年の間に段階的に解体され、現在は存在しません。 SAFEGE式モノレールは、その後フランス国内で発展していくことはありませんでしたが、海を渡った日本では、三菱重工業によって受け継がれていくことになります。 三菱重工業はSAFEGE式モノレール技術の国内導入にあたって、日本エアウェイ開発を設立させます。 その後同社は、名古屋の東山公園へ0.5kmの短距離路線を開業させ、同時にSAFEGE式モノレールの試験とデータ収集を行いました。 写真 東山公園のモノレール 東山公園のSAFEGE式モノレールにおける試験データを基に、後の湘南モノレールが開通します。 現在では営業距離ギネス記録を保持する千葉都市モノレールと合わせて、国内では2路線が活躍中です。 なお、東山公園のSAFEGE式モノレールは、名古屋市交通局協力会によって1974年まで運営されましたが、同年12月に廃止、現在は東山公園内に保存されています。 写真 千葉都市モノレール0形 〔路線〕 1964年-1974年 東山公園モノレール 1970年 湘南モノレール 1988年 千葉都市モノレール 5-2.三菱重工業による湘南モノレールの全持ち株売却 2015年5月22日、三菱重工業など三菱グループ系3社は、湘南モノレールの全株式を交通支援事業会社、みちのりホールディングス(HD)に売却することで合意したと発表しました。 同社では、国際競争が激化する近年、事業の「選択と集中」によって高い成長が見込めるコア事業への経営資源投入を加速させており、湘南モノレールの持ち株譲渡もその方針へ沿うものとしています。 三菱重工業は、同社が導入したSAFEGE式モノレールの技術実証路線として湘南モノレールを立ち上げた経緯があります。 今回の株式譲渡は、三菱重工による同システムの実証実験およびベース開発の終了を意味するものとなりました。 (三菱重工業は引き続き、車両の供給および保守などを通じ湘南モノレールに協力していくとしている。) 写真 湘南モノレール500形 5-3.SIPEMシステム SAFEGE式モノレールの発展(派生)タイプとしてSIPEMが挙げられます。 オリジナルのSAFEGE式モノレールに対し、一両辺りの乗客数が最大で75人程度と小ぶりなシステムとなっています。 |
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6.懸垂式モノレールのレール(軌道) 6-1.SAFEGE式モノレール軌道 懸垂式モノレール(SAFEGE式)のレール(以下、軌道桁と略記)は,基本的に鋼鉄製です。 SAFEGE式モノレールの軌道桁は、側壁部、天井部および下部に配したスキンプレートと、補剛フレーム(以下、リブと略記)ならびに案内走行部プレートにより構成されています。 構造としては、軌道は左右の側壁部、天井部および下部桁を溶接により一体化され、下方に開口部を有した箱型断面形状を有しています。 さらに、SAFEGE式モノレールの軌道桁はリブをスキンプレートの外側に配置するか内側に配置するかによって、外リブ型と内リブ型に分類する事ができます。 内リブ型の鋼軌道については、溶接設計、施工上および構造詳細設計上、外リブ型 に比べ問題点が多いとされている事から、国内で営業している路線(湘南モノレール(一部)および千葉都市モノレール)では、ほとんどの箇所で外リブ型の鋼軌道が採用されています。 また、内リブタイプの鋼軌道においては、軌道桁内において等間隔にリブが内周に沿って直立した形状を取ります。 このため、案内部および走行部プレートはこれらをかわす形で配されています。 前記天井部と前記側壁部と前記下部桁の内周側または外周側は、周方向に沿うリブが配されています。 このリブは該箱桁の長手方向に所定の間隔で設けられ、モノレールを支える軌道桁を補強しています。 等間隔に続くリブは軌道外観から確認できるため、サフェージ式モノレール軌道の特徴的イメージの一つにもなっています。 軌道桁の補強構造については、特に千葉都市モノレールの開業に先駆けて更なる改良が行われました。 千葉都市モノレールの起工式が執り行われたS57年、三菱重工では建設費削減と軽量化を命題とした新軌道桁の開発に着手しました。 3年後のS59年、疲労損傷に対する信頼性の向上、構造の単純化と軽量化および溶接量の低減が図られた新軌道桁が世に送り出される事となり、建設が進められる千葉都市モノレールにて採用されました。 懸垂型モノレールの軌道桁は、下面にスリットを有する箱断面薄肉はり構造で、モノレール車両輪荷重を支持するための断面保持機能が要求されます。 この断面保持機能は軌道桁長手方向に所定のピッチで設置されたリブ(補剛リング)が担っていますが、従来の軌道桁ではこのリブが単独で支持する構造であったため、一箇所に大きな応力が作用していました。 対して、新軌道桁ではリブを密に配する事(表参照)と、側面に連続水平スチナフを設け、軌道桁長手方向への荷重分散効果によって応力集中を緩和し、疲労耐久の向上および軽量化が図られました。同時に部材の単純化と制作の簡易化も図られています。
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[参考資料] 北九州市立交通化学館 /北九州市立交通化学館(-2003)(2004.3閉館) 北九州モノレール50年のあゆみ展 /北九州市立交通化学館(2004.3閉館) ゆいレール展示室 /沖縄都市モノレール株式会社(2014) 手柄山交流ステーション /手柄山交流ステーション(2015) |
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